食生活と健康
Part 2
このページは、
W.A.プライス著「食生活と身体の退化」、G.E.マイニー著「虫歯から始まる全身の病気」
及びプライス・ポテンガー栄養財団(PPNF)
に関連した記事を掲載しています
PPNFへの訪問を終えて
恒志会理事3名片山恒夫先生の命を受けて
San Diego PPNF(Price-Pottenger Nutrition Foundation) を表敬訪問
恒志会 常務理事・医師 山口トキ子
片山先生が W. A. Price 博士の Nutrition and Physical Degeneration を九州大学医学部図書館において発見し、プライス・ポッテンジャー財団の理事長 G. F. Knight 氏から完訳の快諾を得て全額私費で翻訳、出版を成し遂げられたのは1978年のことです。
それから27年の歳月を経て2005年8月、沖 淳先生、菊池 哲先生、私の3人が恒志会の使節団としてサンディエゴにあるPPNFに行って参りました。
8月13日私がサンディエゴ空港に降り立つと私の名前を書いた紙を特つエドワード・ベネットさん(理事長:エドさん)と数本のピンクのバラの花を手にしたマリオン・パトリシア・カナリーさん(事務理事:パットさん、79歳)が出迎えてくれました。そのお花を受け取った時、何とも言えない高貴な香りに感動しました。カリフォルニアの太陽をいっぱいに浴びてパットさんのお庭で育ったバラは私の緊張した心をときほぐしてくれました。 8月14日は菊池先生が、15日にはハワイから沖先生と御子息の真平くん(アメリカの大学に留学中)が到着しました。
最近引っ越したばかりというレモングローブというこぢんまりとした静かな町にあるPPNFのオフィスで私達3人は顔を合わせました。オフィスの入りロには書籍の販売コーナーがあり、受付の女性が笑顔で挨拶をしてくれました。その奥には会員が利用できる図書の閲覧スペースがあり、その後方には事務局スタッフの机が置かれていました。一番奥の部屋は膨大な資料の保管室となっていました。
事務局長であるジョアン・グリンジさんとオフィスマネージャーのジャック・チャイルドレスさんと女性スタッフ一人と挨拶を交わしました。現在ではジョーンさんが実務上運営に携わっていらっしゃるようでした。ジャックさんは、古い資料の保管や整理ににしそうでした。ジョーンさんはPPNFのホームページを見せながら、会員専用のサイトを使って情報を発信したり啓蒙活動をしていると説明してくれました。
8月15日午後7時から始まる理事会の前に遅い昼食と早い夕食を兼ねてバイキングレストランに招待していただきました。オフィスに戻ると副理事長のディビットJさん(自然療法士)と理事の方3人とお会いしました。アーレン・キーファーさんという鍼灸師の女性、70歳代の会計担当のアンドリューFさん、そして83歳の老婦人でした。
PPNF 7名、恒志会3名、パットさんの知人で英語を教えている先生、メアリーさんの計11名で理事会が始まりました。エドさんから開会のご挨拶があった後、菊池先生のプレゼンテーションが始まりました。
片山先生のお写真を見せながら人物像に触れ、長年にわたる偉大な業績について説明してくださいました。セミナーで使用された歯と歯ぐきが良くなっていく写真の変化には一同、大変驚いていました。Kシリーズ歯ブラシにも興味を待たれたようでした。『歯無しにならない話し』の英訳本についても、販路など協力体制を申し出てくださいました。
沖先生は、片山先生の医哲学について、真平くんを通訳として熱く語っておられました。片山先生がおみやげとして瀬戸焼の渋い茶色いお皿を渡されましたが、沖先生が「このお皿のように固い信念を持って地べたをはうように努力し続けてこられた」とおっしゃった言葉がとても印象的でした。
具体的な協力関係として、PPNFジャーナルの恒志会会報への引用やPrice博士のNutrition and Physical Degenerationの要約本(日本語訳)に関する事などが話し合われました。そしてPPNFと恒志会が今後手を携えて活動していくことを確認し合い、理事会は終了しました。
8月16日は、私達4人とエドさんパットさんはジョーンさんの運転でサンディエゴを案内していただきました。オーガニックな食品を扱うスーパーや、サンディエゴ発祥の地であるオールドタウン、ホテル・デル・コロナドなどで楽しい時間を過ごさせて頂きました。
私は日木食を作る事を前提にパットさんのご自宅に泊めていただきました。大の日本食通で、しょうゆ、みそは当然のことながら、のり、ひじきまでが揃っておりました。私へのリクエストは、海藻を使った料理、みそ汁、だしと言うことでしたので、煮干し、か
つおぶし、昆布を日本から持っていきました。キュウリ、オクラ、ナスなど日本のものとは違い、皮が厚かったり、昧が少し異なるので、調理するのにとても苦労しました。今回おみやげの1つとしてカステラを持っていったところ“too much sugar” と言われてしまい、大失敗しました。砂糖の代わりにキシリトールを使っていました。このことも大変よい経験になりました。
今回の訪問でPPNFの皆様よりあたたかいおもてなしを頂戴したことに感謝申し上げます。短い滞在でしたが、PPNFと恒志会の結びつきがより強固なものになったことを確信しました。この結びつきを維持していくよう努力する必要があると考えています。英語力の乏しさから正確にお伝えできない部分が多々あります事をお許しください。
片山先生のおかげでこのようなチャンスいただきましたことに心より感謝申し上げます。
訪問にあたりまして交渉役をおつとめいただいた鈴木博信先生、お忙しい中同行していただきました沖 淳先生・菊池 哲先生にもこの紙面をお借りして厚くお礼を中し上げます。
PPNFキュレーターのパットコナリー女史
歯科医師コナリー先生の亡き後、PPNFを守る実質的な責任者。
後ろはすべて歴史的なものも含む健康、食、栄養に関する書籍、論文。
会員はすべて閲覧可能。
一部の書籍は一般の人に解放。右端 事務長のジョアン グリンジ
元看護師でPPNF活動の中心人物PPNF 理事の皆様と
左 エド ベネット理事長
中央 パット コナリー女史
右 デビッド ゲトフ副理事長
PPNFの理事会
恒志会3名の理事が参加。今後姉妹関係を結んで協力していくことを決定。
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News Letterに掲載された恒志会訪問の記事原文
The PPNF Board of Directors was honored a newly formed non-profit organization in Japan, with goals and patterns similar to those of PPNF. Jun Oki DDS, PhD Makoto Kikuchi, DDS,PhD; and Tokiko Yamaguchi, MD(Dr Oki's son,Shimpei Oki, joined us to translate)came to visit us to see how we function as a NPO perpetuating the researches and application of the life's work of those whom we preserve and archive, and how this can be disseminated and supported by their non-profit organization reaching out to an ever expanding audience.一PPNF Advisory Board member Mary Ann Sowards, joined our meeting, sharing with us her many years of experience and appreciation of Japanese culture,
Dr Tsuneo Katayama founder of the Katayama Dental Institute, arranged with PPNF's founding president,Granville Knight,prior to Dr. Knight's death in 1982, to allow him to have Nutrition and Physical Degeneration translated into Japanese. This edition of Dr. Price's book is in hard cover and fairly technical language for health care providers' instruction, depending on the doctors to pass the information onto their patients. Now,perhaps a simpler version may be made available for the public at large.
Later, Dr. Katayama negotiated with Dr. George Meining to translate Cover-Up into Japanese, which has now 1 ed Dr. Katayama to arrange with PPNF to grant permission to translate the 1174 Pages of Dr. Price's Dental Infections Oral and Systemic, and Dental Infections and the Degenerative diseases, into Japanese (a work now in process). This demonstrates Dr. Katayama's goal to bring the teachings archived by PPNF to the doctors who have been trained the through the Katayama Dental Institute. Dr. Katayama has also asked permission to translate Pottenger's Cats. At this time Dr. Katayama says, ”I have been earnestly wanting, for example, to write some manuals or guide books aiming at general readers-such that it would be easy for ordinary people to put to their daily use what is in these books." This would provide both a lay and a professional version of all of these books. Now well into his 90’s, Dr. Katayama wishes to perpetuate this trust by forming the Koushikai NPO to inherit and propagate his philosophy of medicine and medical care by incorporating the Katayama methods of treating periodontal and other diseases.
They,as much as Dr. Katayama,respect what Dr. Price and Dr. Pottenger achieved and taught, and share Dr. Katayama's volition to continue learning their works more deeply in order to bring their own activities ever closer to the living wishes of Mother Nature. This friendship and trust that have developed, Dr. Katayama believes will rise to new、dimensions through this visit and encounters that will ensue.
We wish them every success with their endeavors and look forward to learning from each other.
News Letterに掲載された恒志会訪問の記事を翻訳
PPNF理事会は、PPNFと同じ目標と形態を持つNPO恒志会が日本に新しく創設されたことに敬意を表したいと思います。
日本から沖 淳先生,菊池 哲先生、山口時子先生(それから沖先生のご子息、信平さんが通訳として参加)の4名の先生方がNPO法人として我々が保存するPriceとPottengerのライフワークの資料の研究や応用をどのように行なっているか、またNPO恒志会としてどのように広め、支えあうか、そして組織を拡大してゆけるかを検討するために訪れた。PPNF勧告委員会メンバー、メアリー・アン・ソワーズさんも会合に参加し、彼女の日本文化の経験や知識を語ってくれた。
片山歯科研究所の創設者、片山恒夫博士はPPNFの創設理事長グランヴィル・ナイト博士が亡くなる(1982年)前に、Price博士の「Nutrition and Physical Degeneration」の日本語への翻訳権を求めてPPNFと交渉をした。 Price博士のこの本はハードカバーとなっており、ヘルスケアーの専門家への語彙が多く、お医者さんが患者さんに説明をするための本となっている。現在もうすこし容易な一般大衆向けの本も出版準備中である。
その後、片山恒夫博士はマイ二ー先生の 「Cover-Up」の 日本語版への翻訳権を得るための交渉をしました。それに続いて、プライスの1174ページもの大書「Dental Infections Oral and Systemic」と「 Dental Infections and the Degenerative diseases」の翻訳権の交渉があります。(交渉はすでに始まっている。そしてこのことはPPNFが完成した教材を、長年に渡って片山歯研で教育してきた先生方に対して教育することが片山博士のゴールであったことを意味しています。片山博士はまた「Pottengerrs Cats 」の翻訳権も求めています。片山博士は「私は心から望んでいます。例えばこれらの本にみられるように一般の人々に分かり易い、そして日常で使えるようなマニュアルとかガイドブックのようなものを書きたいのです。」と言っていました。片山博士はこれらの本を一般向け並びに専門家向けの両方を用意したいということです。
今や90歳代となっている片山博士はNPO恒志会を作ることによってこの信託を恒久化したいと願っているのです。
歯周病や他の病気治療にみられる片山方式を取り入れながら、彼の医学や医療の哲学を受け継ぎ広めていってほしいと望んでいるのです。
恒志会は片山博士と同様にプライス先生やポッテンジャー先生が成し遂げたその教えを尊重しています。そして両先生の教えを更に深く学び、かれらの活動が母なる自然の生きた願望に出来るだけ近づくように片山博士の意思を継承したいと願っています。今まで発展してきた恒志会とPPNFの友情と信託は今回の訪問によって新しい次元に刷新されると片山博士は信じていることでしょう。
私たちPPNFはNPO恒志会の努力が実り、そして今後お互いに学びあえることを楽しみにしています。2006 創刊号 より
PPNF特集
Price-Pottenger Nutrition Foundation
PPNF特集を組むにあたり、一言(編集部より)
片山恒夫先生がさきにウエストン・A・プライス博士の記念碑的名著『栄養と身体の退化』の日本語版を私財をなげうって刊行されたとき、PPNF理事会は片山先生をブラジルのピント博士とならぶ「国際理事」として迎え入れ、PPNFと片山先生の間には深い信頼のきづなが生まれました。
このきづなは、1昨年夏に恒志会から沖 淳、菊池 哲、山口時子の3理事がPPNFを訪問するにおよんで一段と深まり、両者の間に正式の姉妹関係がむすばれました。
そしてPPNFは昨年片山先生が逝去されるや、時をうつさず先生の志と仕事の継承者である「恒志会」を先生の「後任」の国際理事として受けいれました。
これにたいし、当会の土居理事長の提案で片山先生と長年親交をつみ重ねてこられたPPNF専務理事のマリオン・パトリシア・コナリー女史に恒志会の名誉理事にご就任いただくことをお願いし、女史も快諾してくださいました。
1952年に創設されたPPNFの誕生のいきさつやその医哲学の詳細は、本誌所収のコナリー女史の恒志会あて書簡やインタビューをご参照いただくとして、以下には、「一切の広告を廃し、受胎以前[つまり、子をもつことをきめた両親のあり方一編集部]から高齢時にいたる全生涯を生きいきと健康に生きぬくための本物の情報を満載した」機関紙 一 と銘うたれたPPNFの季刊雑誌「健康と癒しの智慧」(“Health and Healing Wisdom”)が掲げている「PPNFの使命」をご紹介しておきましょう。
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よき栄養とよき生活スタイルこそ健康の源泉です。そのための「真に良質な情報源」となり、わたしたちの同時代の人びとと未来の人たちが力一杯健康に生きていく助けとなる情報を一般の方々と志ある健康専門職の方々に提供していく非営利財団 ー それがPPNFです。
そのためにPPNFはー
- 健康に影響を及ぼさずにはおかない現代の高度に技術化された世界にあって、健康に真に役立つ情報をあつめ、その学習・応用・研究・普及につとめます。
- ウエストン・A・プライス博士の名著『栄養と身体の退化』をはじめとする同博士の貴重な労作を、いつでもだれにでも読んでもらえ学んでもらえるように、くりかえし出版しつづけます。
- プライス博士、ポテンジャー博士をはじめとするおおくのすぐれた人びとの栄養と生活スタイルにかんする業績を網羅して保有するわたしたちのユニークなアーカイヴ、ならびにこの200年間に刊行された栄養と健康をめぐる研究書・文献資料・啓蒙書をあつめたわたしたちのライブラリーを全力をあげて維持・発展させていきます。
一 母なる大自然に従うところに、生命は花開き全うされる(ウエストン・A・プライス)ー
(Life in all its Fullness is Mother Nature Obeyed. ーWeston A. Price,DDS)恒志会の姉妹機関「PPNF」入会の手続き
★Tel : +1-619-462-7600 Fax : +1-619-4-3136
★ホームページ : www.ppnf.or9
★E-mail : info@ppnf.or9
★年会費:一般個人会員 1人 $40 ;2人/家族 $50 ; 学生 $30 ;60歳以上のシニア市民 $30 ;健康専門職(ドクター、ナースなど)$100 ;賛助会員 $1,000 ;米国々外の在往者は、以上に加えて$15を負担します。
★会費の払い込み方
⚫︎PPNFあて「ドル小切手」を、PPNF,PO Box 2614, La Mesa, CA 91943-2614,USA,むけに送る。
⚫︎電話かFaxでクレジット・カードの番号・有効期限・名義を伝える。その際、自分の住所・氏名・Tel / Fax 番号も伝えること。
★会員になると、季刊雑誌 “Health and Healing Wisdom” の受取り、PPNFの開く「健康学級」への参加、PPNFの発行している書籍・パンフレットを始めとする諸々の情報を受取ることが可能になります。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
カリフォルニアの大火でサン・ディゴ市のPPNF本部も一時閉鎖
会員諸兄姉もニュース報道を通じて10月、11月と続いたカリフォルニア州の大火 ー「山火事」から始まってロサンゼルス、サン・ディエゴの市街にもひろがる大災害となりました ー についてはご存じと思います。
市街地で般大の被害をうけたのが、私たちの姉妹機関、PPNF所在地のサン・ディエゴ市を含む、カリフォルニア州サン・ディエゴ郡です。
11月はじめ現在で家屋700軒、トレーラー・ハウス170軒(陽光あふれるカリフォルニア州は引退後の生活を「移動住宅」で楽しむ人も多いのです)が全焼し(サン・ディエゴ郡災害対策局しらべ)、市内にあるPPNF本部も煙にまかれて仕事にならなくなり、11月4日まで閉鎖されていました。 PPNF関係者ではコナリー女史らのご自宅も煙にまかれ、副理事長のディヴィッド・ゲトフさんは自宅全焼の被害にあって知人宅に避難されました。サン・ディエゴ郡をふくむ州南部で家を捨てて避難した人の数は、11月はじめ現在で51万人に達しました。
ブッシユ大統領は同郡を災害地域に指定し、被災市民や企業にたいし見舞金を送り、特別の低利子融資をスタートさせています。
志がおありの方は、上記しましたPPNFの私書箱あてに$小切手でカンパをしてあげて下さると幸いです。
(編集部)サン・ディエゴ・ユニオン・トリビューン紙
(San Diego union-Tribune)10月25日付写真より恒志会名誉理事就任によせて
一昨年、悟志会代表がPPNF(Price-Pottenger Nutrition Foundation=プライス・ポテンジャー栄養財団)を訪問した際、恒志会とPPNFとの問で正式に姉妹関係を結ぶことになりました。
そんな関係でPPNF専務理事マリオン・パトリシア・コナリー女史に恒志会の名誉理事就任をお願いしました。
本橋はこの要請にこたえる形でコナリー女史から鈴木博信先生宛によせられた手紙の翻訳です。 【編集部註】私を恒志会理事の名誉理事に選んで下さいました土居先生、そしてこの名誉ある決定を支持して下さいました恒志会の方々に感謝をお伝え下さい。このたびの名誉を、心から感謝しております。
片山恒夫博士の教えと歩まれた歴史を支えて行くうえで、このたびの栄誉に伴って私が知っておくべきこと、果たすべき責任は、何であれ、お知らせ下さい。 PPNFのアーカイヴは、人類の健康を最高に発揮させる教えを率先して世に示した輝かしい先駆者たちの資料から成りたっています。片山博士の生涯と教えに関するあらゆる情報を提供していただき、PPNFのアーカイヴに加えることができればうれしく存じます。
あなたが求めておられたPPNFについての情報を送るのが遅くなって申し訳ありません。
現在PPNFと呼ばれている組織を最初に作った創立メンバーはAAAN (=American Academyof Applied Nutritionrアメリカ応用
栄養学アカデミー」)に置かれた「プライス委員会(Price Committee)」です。プライス博士は、ご自分が蒐集された資料とこれを適切に保管・維持するための資金としておよそ1万5千ドルをAAANに寄贈されました。プライス委員会のメンバーは、AAANはプライス博士の願いに応じてプライス・コレクション保管の責任を引き受けるのに相応しくない、という判断を下しました。そこで、委員会はAAANから離れ、グランヴィル・ナイト医博(Granville Knight)が申し出られた、「自分の持っている非営利のサンタ・バーバラ・ヴィールス財団を『ウェストン・A・プライス記念財団』として使用してほしい」という好意を受け入れて、フランシス・ポテンジャー・ジュニア医博(Francis Pottenger, Jr.)を理事長とする新財団を発足させました。プライス博士と博士のコレクションの主事を務めてきていたアルフレダ・ルークが、ナイト博士の支援の下にプライス・コレクションの保管とプライス博士の遺志を広く伝えていく役割を受け持つことになりました。
フランシス・ポテンジャーが逝去すると、財団の理事会はポテンジャー博士を記念して財団の名称を「プライス・ポテンジャー財団」と改称することを決めました。
その後、ウィリアム・アルブレト博士(William Albrecht)の資料を受け入れたさい、財団名は「プライス・ポテンジャー栄養
財団」(Price-Pottenger Nutrition Foundation : PPNF)という名称に変わりました。プライス博士のコレクションの中には、上記「プライス委員会」のメンバーの中の何人かが個々に所蔵しているものもありました。アルフレダ・ルークはプライス・コレクションが分散していることに心を痛めていました。私の夫ジョウゼフ・コナリー(Joseph Connolly)がトラックにアルフレダを同乗させて走りまわり、分散して所有されている資料を集めました。集めことのできた資料は、ジョーのオフィスの、車4台が入るガレージー杯になりました。資料はガレージに保管することにしたのです。その資料は、一時アルフレダにとって仕事のしやすいカルフォルニア州のモンロヴィアに移されましたが、アルフレダの死後、資料は再びジョーのガレージにもどり、PPNFの本式のオフィスができるまでそこに留まりました。
ジョウゼフ・コナリーは私と最初のデートをして食事をとったあと、4台入りガレージー杯になったプライス・コレクションを私に見せてくれました。彼はこの資料について教育してくれる一方、アルフレダ・ルークに紹介してくれました。彼女は私に、プライス博士のメッセージを身につけてジョーの患者たちに伝えてほしい、と言いました。ジョーとの結婚に先立って、私は彼女が州立サンディエゴ・カレッジで受け持っていた講義に出席し始め、たくさんの興味深い人物に出会いました。この方々は、プライス博士と博士のコレクションについて学びながら、そのご長く私を助けてくれることになりました。
ジョーと結婚すると、彼は言いました。「歯科助手として働いて私にまちがった器具を渡してもらうよりも、プライス博士のメッセージを私の患者さんに伝えてもらう方がはるかに助かる」と。そこで私はサン・ディエゴでアルフレダ・ルークの私的な助手になり、アルフレダがモンロヴィアに行ってプライス・コレクションを研究し整理・分類する時には、同行して一緒に数日を過ごすことがまれではありませんでした。
アルフレダの死後、ナイト博士からアルフレダのところにあるプライス・コレクションを残らずPPNFへ持ってくるように、と頼まれました。アルフレダと親交があり、彼女のところで一緒に仕事をしてきたのは私だけだったからです。私はナイト博士が手配してくれたトレイラーにアルフレダのところにあった資料を残らず運びこみました。 PPNF理事会は、アルフレダの葬儀が終わると、その場で、つまり葬儀所のオフィスで私をPPNFの臨時の「図書・資料管理責任者(キュレイター)」に選びました。そこで私は理事会にたずねました。「トレイラーに積みこんである144本のファイル・キャビネットと更にはるかに多量のコレクションはどうしましょうか?」と。「あなたとジョーとで自宅に運んで下さい。今やあなたがキュレイター代行なのですから」というのが、ナイト博士の答えでした。私たち夫婦は、これらのキャビネットや資料を収容するためのスペースを自宅に増設しました。その後の理事会で私は正式にキュレイターに選ばれ、今もその役目を引き受けています。私の家にはずいぶん多くの人が訪れるようになりました。私の家の周辺に駐車する車が増えたことに、隣近所から苦情が出始めましたので、PPNFのために、オフィス・スペースを借りあげる必要が出てきました。ジョーの両親が亡くなったので、私たちはジョーのクリニックの後ろにあるご両親の住んでいたアパートにPPNF
を移しました。プライス・コレクションは再びジョーの4台入れるガレージに戻りました。
ジョーと私は、専門家のための講座を開いて教え始めました。一般市民むけのコースは私しが教えました。ただし、PPNFの事務仕事に大半の時回をとられてしまい、講義にはわずかの時間しか割けませんでした。 PPNFのコレクションは増えつづけ、PPNFの事業活勤も広がってきましたので、図書室・コレクション・講義室等々を収容できるもっと広いところへ移る必要が生じました。
PPNFの諸々の活動を支えるに足る基金を生みだすこと。これは今に至るまで、絶えざる課題です。私たちはまず会員制をスタートさせ、ついでPPNFの教えにプラスになる図書類の販売を始めました。そして毎年末には、寄付金をつのる推進活動をしています。現在、私たちはPPNFの開く講座は有料にする一方、ホームページをはじめとするウェブ上のチャンネルを拡充して、図書販売とさらなる会員増加の一手段としています。
PPNFのコレクションには、プライス博士やポテンジャー博士やすでにコレクションに入っているその他の専門家のメッセージを支え補強してくれる食養分野の卓越した先駆者たちのコレクションの受け入れが進行しています。ごく最近のものは、恒志会からもたらされた片山博士の著作と博士に関する情報であり、また、プライス博士の独創的な「根管と中心感染」の教えるところをふまえて集められたジョージ・マイニー博士(George Meini9)の資料とその著作です。
これらの教えを市民に伝えていく仕事を、あなた方と手を取り合って進めることができるのは喜びです。恒志会をPPNFの必須の成分として市民に紹介していくことができるのは、私たちの誇りです。
長々とお話しましたが、以上は私の知っている、そして40年以上にわたって私が関わってきたPPNFの歴史の一部です。プライス
博士の名著NPD(=Nutrition and Physical Degenerationのこと。日本語版は片山恒夫監訳『栄養と身体の退化』)が一度絶版になったあと復刊がきまり印刷が始まろうとしていた場面も覚えていますし、ジョーが電話でナイト博士をはじめとする理事会のメン
バーと復刊した版にあたらしい序章を付け加える件をめぐって話し合っているところや、出てきたゲラを初版本の各ページと引き比べながら「誤りなし」と確信できるまで、いつ終わるとも知れない校正作業に打ち込んだことも忘れません。
私たちの人生はナイト医学博士から大きな影響を受けました。こうして、息子のジョウゼフ・コナリーⅢ世(Joseph Connolly Ⅲ)は医学部に進んだのです。私たちは NPDの縮刷版を出そうと考えて一度は業者に注文を出しましたが、「プライス博士の筆になる原著の文章が実に美しい」という点で全員が同じ思いでしたので、縮刷版を印刷にかけるのを中止して、原著そのもののペイパーバック版を刊行することにいたしました。 NPDのペイパーバック版は売れ続けています。
博信さん(当会副理事長の鈴木博信)、私の記憶にある初期のハイライトは、はるか以前のジョーも健在だった時にあなたがPPNFを訪ねてくれた場面です。最近では3人の「恒志会」代表の方々が訪問して下さいました。
あなたが私の「日本からの精神的な娘」として時子(当会理事の山口時子医博)を「贈って」くれ、彼女が私たちのところへ来てくれたことは、私たちにとりまことに大きな意味をもっています。私は、米空軍の医官になっている私の息子が来年日本駐在になる予定でしたので、これにあわせて日本を訪れたいと願っていましたが、このほど息子はもう2年ドイツ駐在が延長されることになった模様です。
恒志会が「日本有機農業研究会」と一緒に開かれた合宿セミナーについて、どんなことでもよろしいからお知らせいただけるとうれしく存じます。
「日本有機農業研究会」の佐藤理事長のお話しもふくめ、菊池理事からリポートがおくられるものと想像しますが・・・。あなた方がそうしてよいとおっしゃるなら、「PPNFジャーナル」によろこんで掲載させていただきたいと思うのです。
2007年1月16日
訳 鈴木博信
マリオン・パトリシア・コナリー
Marion Patricia Connollyパット(Pat)さんの愛称で知られるPPNF理事。図書・資料管理責任者(キュレイター)として創立まもない頃から財団の活動を支えてきたPPNFの大黒柱的存在。
PPNFとのかかわりあい、そしてわたしの食養論
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歯科医師を中心にして発足した「恒志会」は、片山先生の提唱された「医患共同作戦」を推進しつつ、いずれは一般市民の方々と手をたずさえて「ほんまもん」の健康教育の担い手となることを志しています。この「恒志会」のいわば兄貴分、姉貴分にあたるPPNF[プライス・ポテンジャー栄養財団]は、一方ではプライス博士の記念碑的名著『栄養と身体の退化』(片山先生が1978年に自費出版で邦訳を刊行された事はご存知のとおりです)や、ポテンジャー博士らの業績とそのもとになった膨大な研究資料やスライドの保存と情報提供にあたる一方、市民にたいする健康教育、とりわけインスタント食品や添加物が氾濫する中で、どんな食材をどのように組み合わせて食べるのが生き生きと健康に生きる秘訣であるか、という「食育」に力を入れて精力的に活動しています。
一昨年夏、恒志会を代表して沖、菊池、山口の3先生がPPNFを訪問して下さったのをきっかけにして、このPPNFと恒志会との姉妹都市ならぬ「姉妹機関]としての友情・提携関係にあたらしいページが聞かれました。(そのことは、3先生の訪問を伝える当誌創刊号6ページの記事に御覧になる通りです)
1965年に発足したPPNFは、2005年に創立40周年を迎えました。生みの親の一人で、創立以来PPNFの大黒柱として活動してこられた専務理事のパット・コナリーさんが、ちょうど昨年から今年にかけてPPNFの機関誌である「健康と癒しの知恵」《Health and Healing Wisdom》編集部の間に答えて、ご自分とPPNFとの関わり、それをとおして打ちたててこられた食養論、食育哲学を語っておられます。そこで、以下にこのインタビュー記事の摘要をご紹介して、同人の皆様にPPNFをよりよく理解していただくよすがにして頂きたいとおもいました。
今回はPPNF小史とも言うべき箇所をご紹介し、次回からは「食養論」を順次お伝えしたく存じます。
(聞き手は上記機関誌の編集員です。)
鈴木博信
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ー PPNFの創立40年を記念してお話をうかがえて光栄です。PPNF誕生の時から財団とともに歩んでこられたあなたは、PPNFの来し方と行く末を橋渡しして下さる「生きた百科事典」ともいえるお方です。
食育についてはひとかたならぬ関心をもっている機関誌の読者にとっては、PPNFの「ものの考え方」をさらによく理解し、食生活を改善する上でさらなるヒントがいただけると存じます。
ところで、あなたが健康・栄養・どんな食事を作るかという研究に生涯をかけることになられたのは、どんな方々の影響をおうけになったからですか?
パットさん:まずわたしの母親です。「ナマの新鮮な素材が大切」。母はいつもそう言っていました。いろいろな料理を食べるまえに、かならず何かナマのものを食べること、これが母の食育でした。
冷蔵庫にはいつもナマのにんじん、食べやすく切ったかぶ、セロリの細切りが用意されていました。学校から帰っておやつをもらうときは、その前にまずこうしたナマのにんじん、セロリ、リンゴといった材料を食べなくてはならない決まりでした。
夕食は、きまってサラダ菜をはじめとするいろいろな野菜から始まりましたし、朝食もまず新鮮な果物からスタートするのでした。
第二次大戦中は肉類が配給制になったので、質素な生活の中でお金をかけずに良質のタンパクをどう入手するかが課題になりました。その結果、わたしたちはレバー、牛の舌、子羊の腎臓や胸腺といった栄養分たっぷりの食材を口にすることになりました。他の人々がモツを食べたがらないので、肉屋さんはこうした材料を母のためにとっておいてくれたのです。母はフランス人の友達に教
わってよくモツと野菜でシチューを作ってくれたものです。
ことわるまでもありませんが、わたしの夫になったジョー・コナリーからも大きな影響を受けました。ジョーはホリスティック・デンティスト、つまり歯科医たるものは患者の身体全体の健康を視野に入れて治療に当たらなければならないという信念の持ち主でした。
もう一人、巨大な影響をうけたのはアルフレダ・ルークさん(Alfreda Rooke)です。ウィンストン・プライス博士とメルヴィン・ページ博士のお二人からもむろん実に大きな影響を受け、今も受け続けていることはいうまでもありません。
アルフレダは歯科衛生技師で、ある専門学校で衛生と健康の講義をうけもっていましたが、プライス博士のお仕事に感銘をうけ、博士にお願いして、何度か講義に来ていただいているうちに、プライス博士の助け手となって働きたい、そのためには今の能力では不十分だと考えて専門学校の講師を辞職し、カリフォルニア大学のパークレ一校に入学して公衆衛生の修士号を取りました。
プライス博士もアルフレダの熱意に感勤し、自分の仕事を継いでくれる人物に育てたいと考えてもう—度大学にもどってさらに土壌学を学ぶようにと彼女に勧めました。こうしてアルフレダはミズーリ大学のウィリアム・アルブレヒト博士のもとで土壌学を学んだのです。「土について語り食物の作り方を語れずして、食物を語ることはできない」。そうプライス先生は考えておられたのです。
アルフレダが土壌学を学んで先生のもとへ帰ったときは、すでにプライス博士はかなり健康を害しておられました。
当時プライス先生を囲む勉強会の医師のひとりにミラー博士という方がおられました。 ミラー博士の地所は土がよく肥えていて以前は競走馬に活力を回復させる場として使われていたことがわかっていましたので、ここで2頭の乳牛を飼って栄養分たっぷりの生クリームを入手し、バターも作ってプライス先生に差し上げているうちに、先生はベッドを離れ一時は講演旅行をこなされるところまで回復されたそうです。
先生が言われていた「プライス要素」ーいわゆる活力素 Xーをたっぷり含む食材が威力を発揮したわけですね。
プライス先生が亡くなられた時、先生が残された資料はすべてアルフレダがうけ継ぎました。プライス先生を囲む勉強会に参加していた医師のなかにはプライス先生からいただいた資料を持っていると言い出すものもいましたが、アルフレダはジョー・コナリーが集めて保管している資料以外は信用しませんでした。
ジョーのコレクションとアルフレダが先生からじかに託された資料がひとつにまとめられ、ジョーのもっていた広々とした車庫で保管されることになりました。 144本にのぼるファイリング・キャビネットや多数のコダクローム・スライドなどからなる膨大な資料庫が誕生しました。このジョーの車庫は、わたしにとって大事な学校のひとつとなり、そしてプライス・コレクションを守っていこうというジョーたちの思いをわたしが引き継いでいくことになったわけです。
これと並行して、ジョーのすすめでわたしは当時アレフレダがカリフォルニア州立大学サンディエゴ校の市民向け栄養講座で開講していたコースに入って勉強しました。そこでクラスメートになった多くの方々の中から初期のPPNFの活動を一緒に支えてくれる同志が生まれました。(現在PPNFの副理事長をしてくれているデイヴィッド・ゲトフはその時以来の仲間です。ゲトフはコースを終えると直ぐ地元の病院や成人学校で栄養講座をはじめました。)
わたしはまた、かねてからジョー自身が実地で学んできた、食育の専門家であるフロリダ州のセント・ピータースバーグ在住の医師メルヴィン・ページ博士のところにも—夏滞在し、「虹の食事」(レインボー・ダイエット)という名で知られていた野菜食をはじめ、多くの貴重な教えを吸収しました。「虹の食事」というのは、患者達にクリニックのビュッフエで五色の野菜からそれぞれが指示されている野菜とタンパク食とを選んでもらい、ステンレス製の蒸し器に入れて5分間蒸した上でバターと塩を調味料にして食べてもらうというものです。ページ博士の食養法は今もわたしたちの考え方の大切な要素となっており、当時ジョーとともにまとめた「ページ方式」の料理法のパンフレットは今もPPNFで入手して頂けます(=The Candida Albicans Yeast-Free Cookbook)。
健康によい食事のあり方、これを実地に学びとること。これだけは結婚前にしてほしいというジョーの勧めで、他にも色んな専門家をお訪ねして学びました。
こうしてポテンジャー博士とも、アルフレダに紹介してもらってお近づきになり、わたしの友人を何人か博士の患者としてみていただきましたので、ポテンジャー博士の診療ぶりも学ぶことができたのです。
PPNFが財団として発足するのと前後してわたしはジョーと結婚しました。そして、ジョーのクリニックで助手役を勤めることになったのですが、ある時ジョーが言い出しました。
「君はわたしのところに患者としてやってくる子供たちのご両親に何をどう食べればよいか、栄養のことを教える役をした方がいい。わたしにうっかり間違った器具を渡すよりその方がむいている」というのです。
こうして、ご両親たちに毎週わたしの自宅に集まってもらい、「栄養学級」を始めたのです。教材にはアルフレダの講義で使ったテキストとスライドを使いました。
これをみてアルフレダはどんどんあたらしい資料をとどけてサポートしてくれ、わたしは栄養学級をあちこちの成人学校でうけもつようになるのです。
診療の合間をぬって多くの歯科や医学、栄養学関係の学会や集会に出席し続けたジョーとともにジョーの助手ということでわたしも出席し、そうした中でカリフォルニア州立歯科大学院で週末を利用して食育のクラスをジョーと一緒にうけもつことも始まりました。ここでテキストに使うために書き上げたのが「生きた食べ物ミニ・ガイド」(Mini-Guide to Living Foods)です。 このパンフレットを使ってPPNFでも栄養学級をひらいて、指導を始めました。
アルフレダが亡くなったころから、様々な医学・歯学関係の展示会にPPNFのブースを出しはじめました。これを通じてプライス先生やポテンジャー先生の業績に関心をもってくださる先生方があらわれ、この先生方からも実地に即した具体的な症例や教えを学ぶことができました。
PPNFはこんな風にして始まったのです。
ー ところで、わたしたちのジャーナルの読者にすすめたいという食物を、カテゴリー別にあげていただきたいのです。
ただ、そのまえに、読者の方々に「代謝のタイプ」という考えかたになじんでもらうための、とびきりわかりやすい方法を教えていただけませんか? 自分の代謝のタイプがわかれば、具体的にどういう食品をえらぶのがよいか、自分で判断できるわけですから。パットさん:「代謝のタイプ」の手ほどきは、ジョウゼフ・メルコラ博士(D「.Joseph MERCOLA)のウェブサイトで無料でみることができます(www.mercola.com)。代謝のタイプの基本的なしらべかたがわかります。そこでの議論とテストの仕方を知りますと、研究したい人は、自分が食事をするうえで重点的に必要なのはタンパクか炭水化物か、それともバランスのとれた形で双方を組み合わせてとるべきか、が分かります。
ー ということは、代謝のタイプが混合型とわかった人は、タンパクと炭水化物のどちらか一方に重点をおくのでなく、双方のカテゴリーから食べてよいということでしょうか?
パットさん:そのとおりです。
一 具体的な食品にうつって、まずタンパクを取りあけてみます。あなたが執筆された料理の本(《The Candida Albicans Yeast-Free Cookbook》。 PPNFから入手可能。 PPNFのホーム・ページは、www.ppnf org. E-mail アドレスは、 info@ppnf.or9)で、ひき肉についてふれておいでですが、ひき肉というものをどう考えておられますか?
パットさん:理論的には、調理する直前に自分でひき肉にするのが好ましいといえます。ひき肉にしてから時間が経ちますと、酸化し栄養も劣化しますし、ひき肉にするプロセスで汚染されることもあるからです。
一 内臓についてとくに注意しておきたいとおもわれたことがおありですか?
パットさん:肝臓、心臓、肝臓はわたしの好物です。ラムの腎臓も好きです。内臓類は野菜のうえにのせて、蒸し器で一緒に蒸すことが多いです。
舌は電気銅で調理します。ー その他の動物タンパクについては、いかがですか?
パットさん:たいていの鳥類は電気鍋で、4時間ほどかけてじっくり火をとおし、ぐつぐつと煮え立ってきたらト口火にして3〜4時間おきます。
七面鳥は回転式のオヴンで300°F[おおまかに摂氏に換算するには、30引いて2で割るとよい]で焼きあげます。ニワトリの足と首、丸ごとのニワトリ、七面鳥の首などは、とてもよいタンパクだと思います。
首も足もふくめニワトリの丸ごと1羽でつくるスープは、じつにおいしいです。足はたっぷりコラーゲンを含んでいますので、冷蔵しますと濃厚なすばらしいゼラチンを提供してくれますし、首は香りをよくしてくれます。こうしてつくったチキン・スープは大きな癒しの力をもっています。
放し飼いにして有機食材を餌にした鳥を選ぶことと、どんな場合にも十二分に熱をとおして調理なさることをお勧めします。
たいていのラムは牧草で育っていると思います。わたしのとくに好きなのはオーストラリア産とニュージーランド産のラムです。骨つきラムのすねは、安く手に入るいい肉です。わたしは、紅茶沸かしで熱湯を用意し、これを電気鍋に入れたラムのすねにひたひたとなる程度にかけて数時間煮こみます。 ぐつぐつと煮え立ってきたら、トロ火にしておきます。そのあと、すねを取りだし骨はすてて肉だけ取り除けておきます。電気鍋ににんじん、セロリ、玉ねぎを入れ仕上がったところで最後にすね肉を加えるのです。
放し飼いにした鳥や動物の肉がどんなに良いと聞かされても、にわかには信じかねるという読者の方には、エリック・シュロッサー著『ファスト・フード国民』(Eric SHLOSSER《Fast Food Nation》)をおすすめします。家畜を放し飼いにしている生産者が地元でみつからないときは、送料がかかりますが、毒性のない動物タンパクをメール・オーダーで入手するのは良い投資です。
いくつかのウェブサイトをとおして質のよい動物タンパクを入手することができます。
www.braatonbeef.comなどがそのひとつです。一 骨髄はどうでしょう?
パットさん:骨髄は良い血球をつくり出す助けになるという研究がいくつも出ています。わたしは肉屋さんに牛の骨やラムのすねを1〜2インチの厚さにスライスしてもらうことにしています。そうしておくと、骨をつかってスープその他の料理をするまえにたやすく骨髄を取りだせます。取りだした骨髄は小ぶりの容器に入れて冷蔵庫にたくわえておき、蒸し野菜やベークド・ポテトにバターとおなじようにしてのせて食卓に出すことにしています。骨髄を外した骨の方はニンジンや玉ねぎ
と一緒にしてスープをつくります。
あなたがたが入手する動物が有機食材を餌にしているか、飼い方が自然に即しているか、屠殺の仕方が衛生的か、などの点を肉の入手先でチェックなさることをお勧めします。有機食材を餌にしている場合は穀物が使われていることが多いのですが、もし選択できるなら、わたしは放し飼いにして牧草で育った動物の肉をえらびます。
一 肉のゼラチンについては、どうお考えですか?
パットさん:ゼラチンについて、ポテンジャー・ジュニア医学博士が食事毎にスープなり肉汁なり紅茶なりにゼラチンを入れて摂ることをすすめたユニークな研究があり、さまざまなタイプのゼラチンについて分析したあと、どういう方式で摂取すればよいか、を明らかにしています。
いまのところ、わたしかお勧めできる安全なゼラチンはただひとつ、アルゼンチン産の、牧草で育った肉牛からとったものだけです。エリート・オルターナティヴという団体をとおして入手できます(www.elitealtemative.net)。 これ以外のゼラチン源は汚染されている危険がたいへん大きいとおもいます。その点でも、上にあげたエリック・シュロッサーの『ファスト・フード国民』は必読
書といえます。ー あなたが摂っておられる肉類では、お手製のジャーキ—類がありますが、どんな作り方をしておられますか?
パットさん:新鮮な生まの肉をほとんど栄養分を損なうことなくべんりな、どこにでも持っていける形にしたものがジャーキーですが、たいした手間をかけずにつくれるのです。
牛肉の場合はうす切りをにんにく、しょうが、たまりショウユなどにつけてマリネーしてから乾燥させます。ラムの場合は酢、水、しょうが、にんにく、ミントなどでマリネーにします。
乾燥用のトレーにならべておよそ100°Fの温度で乾燥するのですが、素材がティッシュ・ペイパーくらいにごくうすく切ってあれば4時間くらいで出来上がります。それより厚いと、厚みにもよりますが12時間から場合によっては24時間もかかります。ジャーキーは冷蔵庫ではおよそ1年、冷凍庫に入れておくとさらに長もちします。
一 卵はコレステロールがらみで議論の的になってきました。卵はどのように料理しておられますか?
パットさん:健康なにわとりの生む卵は、調理し過ぎないかぎりとても優秀なタンパク源です。土に爪を立てて走りまわり、虫や植物をえさにして育ったとりの卵は、カラが固く黄身の色が濃くいい香りがします。「商業卵」は避けています。問題だらけの餌、抗生物質 ーこれが投与されるのは飼育工場の過密で不健康な条件をカバーするためですがー を与えられ、一晩中照明を浴びて産卵を促進させられるという状況を「母なる大自然」が意図したはずはありません。
できるだけ手を加えない状態の卵がいちばん栄養があります。わたしは、素姓のはっきりしている生卵は無垢のトマト・ジュースやミックス・ベジタブル・ジュースにくわえてよくかきまぜて飲むことが多いです。これは工場製の「商業卵」の場合には、いうまでもなくおすすめできかねることですが・・・。
卵がコレステロールの犯人という説は、最近の多くの研究によって、そうとうに眉つばものであることが明らかになってきました。ふつう、コレステロールの大半をつくり出す源となっているのは、食物でなくてわたしたち自身の肝臓です。むろん、最近のいくつかの研究が立証しているように、砂糖や精製した炭水化物を摂ると肝臓が刺激されて過剰にコレステロールを産出するといった、食物がわるさをする場合があるのはたしかですが。わたしたちの祖先は、自然の餌を食べ自然に育ったにわとりの生む卵を数千年にわたって食べつづけ、いまよりもずっとよく体をつかう活動的な生活をしてきました。いまの卵は、「工場飼育」という私たちの犯している罪をなすりつけられて贖罪の羊扱いをされているのです。
ー ジャーナルの読者のために、油というもうひとつの重要な栄養素について、どう考えればよいか、助言していただけますか?
パットさん:汚染されていないものなら、タラの肝油はすばらしい食品です。汚染されていないかどうか、をチェックしてくれる研究所もいくつかあります。
いまひとつのすばらしい油はココヤシの油ですが、(化粧用クラスではない)ほんとに純粋なものであることが必要です。手を加えない生まのバターも、バージン・オリーヴ油にまさるとも劣らないすばらしい油です。
わたしたちは、じぶんが口にする油脂類が有機食品であること、製造過程で有毒な成分が混じったり加熱によって栄養分が破壊されたりしていないこと、をたしかめてから使用すべきです。生まで有機で適切な処理の仕方をした油脂類はじつに大きな癒しの作用をもっています。その反対に加熱しすぎた有機でない不適切な製造過程を経た油脂は健康をはなはだしく損なうおそれがあります。
ー ココナツ油とココナツ・クリームのちがいを教えていただけますか?
パットさん:ココナツ・クリームはすりつぶしたココナツの実を含んでいますが、ココナツ油はココナツから絞り出した油だけで成り立っています。
ー ぶどうの種の油はおすすめ品ですか?
パットさん:有機栽培したぶどうの種の油は貴重な栄養源です。料理につかっても、オリーヴ油とちがって容易に栄養分が壊れたりしないのです。
ぶどうの種の油はどんな料理と合わせても風味をそこなうことのないほのかな香りの持ち主です。
わたしは、手づくりのマヨネーズを作るときに愛用しています。一 生まのバターが低温殺菌したバターより価値が高い理由は、酵素がそこなわれていない点が大きいと考えればいいでしょうか?
パットさん:低温殺菌すると活性を失う、いってみれば金しばりになる諸々の栄養素が、生まのバターではそっくり生きているということです。
サリー・ファロン女史(Sally FALLON)のウェブサイトが提供している生まの乳製品についての議論は、たいへん価値があります(www.westonaprice.or9)。彼女はほんものの(つまり生まの)ミルクを飲もうというキャンペインも推進しており、おなじウェブサイトから生まのミルクの入手先もわかります。
生まのバターは高価で入手しにくい食品ですが、手間ひまかけて手に入れるだけのお値打ちものです。わたしは食卓では生まのバターを使い、パンやケーキを焼くときには有機の低温殺菌バターを使っています。冷凍しておくと、生まのバターはずいぶん長持ちします。生まのバターは、上にあげたメルコラ医学博士のウェブサイトから入手できます。
ー ほかにもおすすめの油はありますか?
パットさん:堅果(ナッツ)類の油は、有機栽培のもので加熱処理を避けているものならどれもたいへん価値があります。たとえばオメガ・ニュートリション(www.omeganutrition.com)は、さまざまな種類の堅果類を提供しています。これまで堅果類や種子類で健康によい油がとれたのは、マカデミアナッツ、ブラジル・ナッツ、ヘーゼルナッツ、種子ではかぼちゃの種子といったところですが、生産者の段階でも消費者が料理するときでも、これらナッツや種子類をけっして加熱し過ぎてはいけません。他の油には含まれていない、しかしわたしたちがまだ突き止めていない様々な栄養素をこれらナッツや種子類が含んでいる可能性があるのです。オメガ・ニュートリションに問いあわせれば、さらにくわしい情報が手に入るはずです。
一 野菜もタンパク源のひとつですが、その点からみたおすすめ食品とこれはすすめられないという食品とをあげていただけますか?
パットさん:ウェストン・プライス博士がいつもすすめておられたのはレンズ豆です。わたしはみどり、茶色、赤など色のついたレンズ豆をえらびますが、ふだんは料理するまえに発芽させもやしにしてから使っています。もやしにして使いますと、栄養価が上り料理時間が短くてすみ、しかも香りに深味が出ます。玉ねぎといっしょに、とくにココナツ油とバターで味をととのえて料理しますと、ほんとに美味しいです。グリンピースのもやしもそれに負けない美味しさです。スープに入れてよし、ほかの野菜といっしょに蒸し野菜にしてよし、です。小豆、ぶちいんげん豆、きささげなども、もやしにして食べてみる価値があるとおもいます。緑豆もたいへん人気のある豆ですが、わたしはまだもやしにしてみたことはありません。
残念なことに、わたしの代謝のタイプからいいますと、野菜はわたしにとってはタンパク源にするには相応しくないように思えます。
ー それでは次回は、堅果類や種子類にもどってそのタンパク源としての価値を伺ったあと、野菜や果物全体についてふれていただきたいと存じます。
そして締めくくりとして、「健康によくて美味しい料理のアイデア」をたっぷりお聞かせいただくのを楽しみにしています。一 食べることは楽しい経験ですが、自然と協力して食べると健康にプラスになることは、ことわるまでもありません。そのさい、栄養のバランスがうまくとれた食べかたをしますと、生きる熱意が湧いてきて、じぶんだけでなくまわりの人びとの人生もゆたかにしてあけることができますね。
パットさん:わたしの夫のジョー[物故された歯科医。 PPNF創立の原動力となられた]は食前のお祈りを、必ず次の言葉でむすんでいました。この食事をいただくことで、「主なるあなたと人類によりよくお仕えできますように」。
ジョーは臨床のかたわら、南カリフォルニア大でも講義をうけもっていました。受講生たちに、かれはいつも語りかけていました。「医師諸君、あなたたちの学位はここで学習することに依って立つものではありません。あなたがたの子供たちがあなたがた以上に健康になり、お孫さんたちが子供たち以上に健康になること、これこそあなたがたが手にする本当の学位です」と。
健康になりたい、と願う人々に対してジョーは、それなら有害な食品を断乎として断ちなさい、そして主が下さった食品を祝宴に招かれた気持ちで食べなさい、と語っていました。
わたしの食物観も、ジョーのことばに要約されています。神さまがあたえて下さった食物を安全に食べていくこと。そして、神さまの下さった食物に手をくわえて変えたり、改良したりしないこと。一 改良など、わたしたちに出来るはずはありません。神の創造物をよりよいものへと改良していく力がわたしたちには備わっている、などとどうして考えることができるのでしょう?
神は自然な食物を癒し手として創造されました。わたしたちに必要なものは、すべてあたえて下さいました。一 健康によい料理・料理法とはどんなものか、どうかんがえるべきか、その基本原則のいくつかをわたしたち後輩のためにお話しくださいますか?
パットさん:わたしたちは台所で延々と時間をつかうべきではありません。ときには食事の準備作業にそれなりの時間をかけるのが必要なこともありますが、それ以外の場合には食事つくりに15分以上はかけないように努めています。かける時聞か長くなるほど、食品が変質し劣化し、結局さらに仕事がふえることになります。調理時間を最小限にするよう努めること、とりわけ肉類の調理にはあまり時間をかけすぎないことです。
これが第1の原則です。第2のコツは、調理の温度です。かるく蒸しあげるのとちがって、高温で調理したり、華氏350度以上の熱で焼いたりするのは非常に有害です。
第3のコツはフリーザーを活用することです。
たっぷり買い入れて冷凍しておくことで、買い物の時間も節約できます。わたしたちの友人のひとりが農務省からえた情報によりますと、2週間以上冷凍してあった肉類はほとんど寄生虫がいなくなっているそうです。寄生虫がひそんでいるおそれがあるから、これこれの肉はたっぷりこれこれの時間をかけて調理すべし、ということになっていますが、その必要がなくなるわけですね。グラ
ンヴィル・ナイト博士は、冷凍すると食品の栄養価はおよそ20パーセント低下すると見積っておられますが、その点は良質の有機食肉をつかうことによってカバーすれば健康な料理を口にすることが可能です。
4番目のコツは、まえもって計画を立て、冷蔵庫や冷凍庫にほんの2、3回の手をくわえるだけでいいところまで調理準備のすんでいる食品を何種類かいつも用意しておくことです。洗いおえて切ればよいだけの状態になっている野菜、切りわければよい肉類といったものです。酸化や栄養分の喪失を防ぐために正しく収納しておくのが必要なことは、いうまでもありません。
第5に、どんな料理でもレシピはできるだけシンプルにすること(ひとつの料理に使う材料は数種類まで)です。その方が、からだにはやさしいのではないでしょうか? おそらく消化管も、とまどいが少なくてすむのではないか、とも思います。
さいごにつけくわえておきたいのは、お手もとの切ったり刻んだり用の調理器具(ナイフ、千切り用カッター、ミキサー、フード・プロセッサーなど)の最大限活用です。調理時間を最小限にするために、それらの器具をひんぱんに使用することです。
いま申しあげたことの土台になる考え方、それを実証する様々な事実については、フランシス・M・ポテンジャー,Jr.医博の『熱で処理した食品が動物に与える影響』(“Effect of Heat Processed Foods on Animals" , by Francis M. Pottenger,Jr.)のリプリント、ならびにおなじポテンジャー先生の著作『ポテンジャーの猫』(“Pottenger's Cats” )の101〜111ページをご覧になってください。 どちらの文献もPPNFから入手していただけます。
ー それでは、食品置き場、冷蔵庫、フリーザーにはどんな食品をストックしておくとよいか、ご助言いただけますか? 食品の正しい貯蔵法についても、このさいおうかがいできればうれしいです。
パットさん:どんな食品を買うときも、できることなら有機食品を入手されるようおすすめします。より安全で、ヴィタミンも微量ミネラル類も生体に利用しやすい型のタンパクもずっとゆたかに含んでおり、しかもよりおいしいのですから。
まえもってミックスした食品、腐敗しないインスタント食品類の大半はおすすめできません。栄養という点からみて、劣化していて価植がおとるからです。また、保存料、健康によくない油脂類、グルタミン酸ソーダ、脳を障害する神経興奮性の添加物等々がふくまれていないかどうか、目を光らせてください。グルタミン酸ソーダが毒性をもつことはひろく知られてきましたので、往々にしてラベルには、「自然の味覚剤」、「スパイス」、「植物タンパク」などとごまかしの表示をしていることがあります。プラスティック容器からは、素材であるビスフェノールAなどが浸みだしてきて、食品に入りこむおそれがあります。プラスティックのふたをつけた缶なども、おなじ理由でさける必要があります。 トマトのような酸性の食品があつかわれている場合は、とくに注意してください。わたしはアルミのホイルもアルミをつかって包装された食品も、極力さけるようにしています。
食品置き場には、主にジュースを、それもびん入りのものにかぎっておいています。パイナップル・ジュースやトマトジュースです。これらジュース類は他の食材にまぜたり、食材を浸したり、風味づけのために加えたりするのに使っています。重金属をさけたいので、缶入り食品は控えるようにしています。ただし、缶詰めの形でしか手に入らない有用な食品がいくつかありますので、これ
は使います。オイル・サーディン、アンチョビ、たけのこ、ココナッツ・ミルクなどがそうです。ホール・トマトを煮たもの、トマト・ペイスト、スパゲティ、[トマト、たまねぎ、にんにくに香料をくわえてつくる]マリナラ・ソース(オメガ・ニュトリション社製のオリーヴ油を使っているものにかぎります(入手先はwww.omeganutrition.com)。オリーヴ、きゅうりのピクルス、アーティチョークの芯、生まのアーモンド・バター、練りごまなどは、ガラスの大瓶入りのものをみつけて使うようにしています。香辛料もガラスびんに入ったものをえらびます。香辛料は、つぎのようなものを使っています。 しょう油、わさび、梅干しのつけ汁、エキストラ・ヴァージンのココナッツ・オイル、おなじくエキストラ・ヴァージンのオリーヴ油、ココナッツ・クリーム、加工しないはちみつ、メープル・シロップ、ヴァニラ、米酢、リンゴ酢、バルサミコ酢などです。レンズまめ、大豆、粒状にしたタピオカ、海藻の干物や干し魚、クズウコンの粉末、さつまいも、タロいも、米、玄米、ひえ、そばなども食品置き場にストックして折にふれて使います。
つぎのような食材 一 有機のものをえらびます ー は冷蔵庫に入れてストックしています。バター(食卓用には生まのバター、料理用には発酵バターを使います)、放し飼いのとりの生んだ卵、りんご、アーティチョーク、アスパラガス、ビーツ、ブロッコリー、キャベツ、にんじん、カリフラワー、セロリ、ふだんそう、コリアンダーの葉、きゅうり、にんにく、さやいんげん、ケール、きのこ類、パセリ、こしょう、ズッキーニ、トマト、クレソンなどなど。
パセリやほうれんそうなどは、鉢に水を入れてそこに保存しています。新鮮なしょうが、味噌、自家製のドレッシング類、サプリメント類、花粉、ヴィタミンE、タラの肝油なども冷蔵庫で保管しています。くるみ、たね類、小麦粉、ココナッツ粉なども同様です。たまねぎ、じゃがいもなどは冷蔵庫には入れないで冷絵所で保存しています。
冷凍庫には、上にあげた食品の予備として堅果類、たね類、すりつぶしたココナッツ、生まのバター、アスパラガス、さやいんげん、えんどう豆、とうもろこし、などをストックしています。熟したバナナ、マンゴー、刻んだパイナップル、ブルーベリ、クランベリ、毎、グアヴァ、パッション・フルーツ、柿といったさまざまな果物も、冷凍してあります。肉類では、下ごしらえのすんだ七面鳥や子羊のすね肉のうす切り(すぐに料理ができます)、牛のレバー、舌、ステーキ用切身、にわとりのもも・骨・胸、ラムの腎臓・心臓・すい臓・足なども冷凍してストックします。スープや肉汁はまえもってつくったもの、のこったものを冷凍しています。
食品をストックするさい、できるだけガラスの容器を使われることをおすすめします。それ以外の場合でバッグを使うときは、プラスティック製でなくセロファンや布でつくったバッグをお使いになるよう、おすすめします。漂白していないペーパー・タオルやろう紙、化学処理をほどこしていない硫酸紙もおすすめです。硫酸紙を皿においてクッキーをつくれば、あとで皿を洗う必要もなく時間の節約になりますし、魚を天火でやくときも、魚とつけあわせの野菜やハープをいっしょに硫酸紙でくるんで料理すると便利です。
冷凍用の食品を冷凍庫に入れるさい、どうしてもプラスティック・バッグを使わざるをえないというときには、その食品を硫酸紙か漂白していないペーパー・タオルで包んだうえでプラスティック・バッグに入れれば、プラスティックの素材が浸みだして食品のなかに入りこむのをすこしは防げるとおもいます。
いまお話したことを上まわる大きな挑戦ーー、
それはレタスや青い葉物をプラスティック・バッグを使わないで保存する方法があるのか? という問題です。そのための方法のかとつは、湿らせた布の袋に入れたうえでファスナーつきのプラスティック・バッグにおさめることです。もうひとつのやり方は、洗いおえて水気をよく切った葉物をペーパー・タオルでくるんでプラスティック・ボックスにおさめ、冷蔵庫に入れることですね。
葉物をゆすぐときの水は過酸化水素をくわえたり、酸素入りの水にしたりして使っています。
食品の保存に関連しますので、野菜の洗い方について—言つけくわえさせてください。というのは、この問題では諸説紛々、ようするにいろいろな意見が入りみだれているからです。どんな野菜でも果物でも、水につけておく時間が長くなるほど、栄養素が水のなかへ逃げ出してしまう、というのがわたしの立場です。ですから手早く洗って、そしてすすぎ洗いも手早くすませてほしいのです。すすぎのさいに漂白剤を使うという考えには、賛成できません。塩素に発癌性があることは周知の事実ですから。
ー なんとゆたかな料理の経験をおもちなんでしょう! ところで、お気に入りの料理用具についてすこしお聞かせくださいますか? 気に入っておられる理由もふくめて・・・。
パットさん:ナイフからお話しましょう。切れ味のよい良質のナイフはお金をかけるに値する買いものです。わたしが使っているのはセラミックの砥ぎ棒とセットになったものですが、スティール製の砥ぎ棒を使うナイフにも、むろんいいものがあります。ようするに料理する食材に適した切れ味のいいものをお使いになることです。わたしがいま愛用しているのは」・A・ヘンケル・インタ
ナショナル社のものです。
ナイフの役に立つ助け手、おぎないとしていつも愛用しているのが、これも良質の料理用はさみです。たやすく2本の刃をはずせるタイプのものですので、清潔に保ちやすいのです。まないたは強化ガラス製のものを使っています。洗うのもかんたんですし、皿洗い機でもきれいになります。プラスティックのまな板は木のまな板にくらべ健康にはよくないうえ、ナイフの切れ味をわるくします。
切ったり刻んだりは、ナイフ、はさみ以外に、手もちで使うチリソース・ミクサー、商品名サラダ・シューターで知られるサラダ素材カッター器などに助けられています。これらの道具はサラダ、スープ、蒸し野菜料理をつくるのに役に立ちますし、ケール、ブロッコリーの茎、カリフラワーの茎など野菜のかたい部分をマッチ棒ほどの大きさまで細かく切り刻むこともできます。野菜の、お
いしくもなければ噛みしめるのも難儀な部分も、こうしたかんたんな道具を使えば捨てずに活用できて生まごみもへり、食物繊維の摂取量もふやすことができるのです。
料理用タイマーはたいへん役に立ちます。良質の、大きな音を出してくれるタイマーは、べつの料理に注意が集中しているうちに、火にかけている料理が調理しすぎになり栄養素が破壊されるのを防いでくれます。
質のよいミキサーは、わたしが一番よく使う「仕掛け」です。ポテンジャー先生は、ミキサーは食品を調理しすぎることになる、とかんがえておられましたが、人生にはちょっぴり妥協も必要です。ミキサーがありますと、健康にはよいものの、ふつうにはすすんで食べようとしていなかった食品にも挑戦する気持ちになれます。
健康によい食品というのは、じつに多様な食べ方ができるものです。刻む、栄養のあるソースにする、スープにする、飲みものをつくる、サラダのドレッシングにする、パンの素材のひとつにして焼く、デザートにする等々、さまざまに使いこなすことができるのです。それに必要なことはただひとつ、想像力を解きはなつことですね。わたしは昔からある、商品名オステライザーというミキサーと、もう1台、商品名ヴィタミックスというのを使っています。これは多くの量や固いものなどの大仕事をこなす役をしてもらっています。どちらもナッツ類などもひきつぶすことができますが、後者は冷凍したマンゴーの果肉やバナナもたやすくこまかくブレンドすることができますので、スムージ一[フルーツやョーグルト、ミルクなどでつくる飲みもの]やアイスクリームの素材が手軽に用意できます。
3つ目の、わたしが不可欠とかんがえているミキサーが、電動型の小型コーヒー・ミキサーです。これはナッツ類、たね類、スパイスをみごとに細かくしてくれますので、ほとんどあっというまにナッツやたね類の入ったシリアルが作れるのです。
フード・プロセッサーをたよりにしている方が多いと思いますが、それも料理にかける時間を短縮して手ばやく調理するのにたいへん役立つ道具です。
電気をつかわない解凍台も価値のある道具です。良質の調理用具店で入手できます。肉や魚を自然に、しかもじつにすばやく解凍してくれます。肉類は、うすい切り身にして冷凍してあれば、ほとんど瞬時に ー90秒ほどで一 調理できます。(肉類のうち、とり類の肉はもっと手間ひまがかかり例外です。)
蒸し器もわたしの好きな道具です。わたしの使っているのは商品名ライフタイムという二段式のもので、野菜を蒸すのにも肉と野菜を組合わせて蒸すのにも使っています。肉といえば、特ににすい臓を野菜のうえにのせて一緒に蒸すことが多いですね。すばやく蒸しあげるコツは、野菜も肉類も細かく刻んでおき、水が沸騰したらとろ火にして5分おくことです。
電気鍋も、すばやく調理して時間を節約するのにおおいに役立ちます。これを使うとたいへん低い温度で調理できますので、そばにつききりでいる必要がなく助かります。シチュー、スープはこれでつくりますし、舌もこの銅でゆっくり低温で調理しますと格別よい味になります。
わたしは良質のステンレス製の調理用具もすきですが、商品名ヴィジョンズという名のガラスのソースパンもよく使います。ガラス製の調理具を使いますと金属製の器具にともなう問題を避けることができますが、ガラスの調理具の場合は低温で調理することとより多くの液体分を加えてやることが必要になります。
わたしはときおり電熱のシチュー鍋やソースパンも使います。十分にストーブの代役をつとめてくれるからです。ストーブをおける環境にない方にとっては、これらを入手するのは価値ある出費と思います。こちらの良いところは、加える熱を180度以下にコントロールできるので、栄養素の破壊が少なくてすむことです。商品によっては、118度以下で「調理可能」という目盛りがついているのもあります。 118度をこえると食品のふくむ酵素の破壊がはじまります。
もうひとつ、わたしが心から気に入っている調理具がファンのついた対流式のポータブル・オヴンです。時間も節約できますし、低温調理ですので消費電力も少なくてすみます。低温で調理できるので栄養素も壊れにくいし、しかも味よく仕上がります。とりわけ肉類は対流式オヴンで調理しますと、味もよく肉汁もたっぷりです。電気式の食品乾燥器は、食品の調理役と栄養保存役の二役を果たしてくれます。クッキー、フルーツ・バー、ビーフ・ジャーキー、野球チップ、自家製のクラッカー、乾燥ハーブ等々を、そばについていなくてもみごとに仕上げてくれるすぐれものです。この道具をつかってつくれるさまざまな料理の手引き書として、ジーン・マクマニマンの『乾燥させてごらん 一 好きになるから』(“Dry It… You'll Like It” by Gen MacManiman)をお勧めします。 PPNFで入手していただけます。
最後にジューサーをお勧めする必要があります。ジューサーを使いますと、すぐに消化できるじつにおおくの栄養素を食事にくわえることができるからです。わたしは米国で市販されているジューサーはすべてためしてみました。どのタイプのどのブランドのジューサーにするか、それはご自分の好みで決めていただけばけっこうです。
大事なことは良質のものを入手して規則正しくジュースを飲むことです。ジュースにするとなぜいいのか、どんなおいしいレシピがあるのか、などの詳しい情報を入手していただくには、サンドラ・カボッツ博士のかかれた『生ジュースはあなたの生命を救う ージュースつくりのAからZまで』(“Raw Juices Can Save Your Life - An A〜Z Guiide to Juicin9”,by Dr. Sandra Cabot)がおすすめです。この本もPPNFで入手できます。
ー それでは食品そのものに話をうつしたいのですが、そのまえに、食べるべき食品を“回転”させる問題、とくべつなダイエットが必要なときに留意すべき点、アレルギーをおこしやすい人のダイエットの問題などについて、ふれてくださいますか?
食品アレルギーのある人のダイエットについて
パットさん:タンパク食品、野菜類、穀物はできることなら、どんな場合でもおなじ食品ばかり摂りつづけないでぐるぐる“回転”させることを、すすめます。からだにかかるストレスが、それだけ減らせるからです。
権威のあるおおくの専門家が、食物アレルギーを悪化させないためには4日のサイクルで回転させることをすすめています。疲労感、頭がもやもやしてスッキリしない、気分がはげしく浮き沈みする、心拍数が増加する等々、アレルギー症状というのは、体にも心にも気持ちにも様々な形であらわれます。食物アレルギーのある人がアレルギーの引き金になる食品をたべると、体内の免疫システムまで障害されるおそれがあります。
グルテン、穀物、炭水化物、乳製品などにアレルギーのある方にたいへんお役に立つ本が、PPNFから出ています。グルテンに敏感な人、グルテン過敏症のかたには、ジェイムズ・ブレイリー博士が執筆した『グルテン含有穀物がなぜあなたの健康によくないか?」(“Why Gluten May Be Hazardous To Your Health”, by James Braley,MD)がすばらしいガイドブックです。
エレイン・ゴットシヤルの『悪循環をたち切ろう 一 消化器を健康にするダイエット』(“Breakingthe Vicious Circle : Intestinal Health through Diet”, by Elaine Gottshall, BA,MSc)は免疫学者の間でも評価の高い書物ですが、その理論の一部はインターネットでも読むことができます。元気のでる健康ドリンク
ー それではこの辺で、パットさん自身が考案されたレシピと、そうしたレシピをお考えになった理由とを、ご披露ねがえますか?まず健康によい、元気のでる飲みものから伺いたく存じます。
パットさん:みどりの栄養ドリンクのひとつ。
これはミクサーで作っていつでも飲めるように常備しています。このジュースの土台としては、パイナップル・ジュースが酵素をたっぷり含み風味もよくおいしいのでよく使いますが、トマト・ジュースやパパイヤ・ジュースを使うこともあります。
そうしたジュースに、コンフリー、オクラ、コリアンダー、パセリ、シソ等々をはじめ食用になるみどりのハーブ、庭でみつけた食べてよい草などをくわえてジュースにするのです。香りづけにショウガを加えることもあります。出来上がったものを裏ごしにして飲む人もいるようですが、わたしはセンイ質もふくめて丸ごと飲むことにしています。
出来上がりが粘っこいときにはスプーンでいただきます。こうしてつくったみどりのドリンクにゼラチンを加え、ゼリーに変身させることもよくやります。孫のひとりの大好物なのです。
毎朝わが家ではこどもたちに、卵をはじめとする朝食に手を出すまえにまず、生のムーズリー(オートミールはその一例です)を加えたみどりのドリンクを飲ませていました。新鮮なみどりのものを食事にくわえるには、それが一番かんたんな方法です。
「みどりのドリンクがいいよ」と、わたしにすすめて下さったカーシュナー博士(H.E.Kirschner)に最後にお目にかかったのは、博士が103才のときでした(もう25年前になります)。
カーシュナー先生はロスアンゼルス郡結核病院の医師でしたが、わたしたちは先生のことを「酵素人間」と呼んでいました。といいますのは、先生は、10年も入院生活をしてきた患者の食事にみどりのドリンクを加えるだけで、健康を回復させるのに成功しておられたからです。
先生の書かれた『ジュースという生きた食品』(“Live Food Juices”)には、みどりのドリンクがなぜよいか、の理論とあわせて先生おすすめのレシピが紹介されています。カーシュナー先生はわたし以外にもたくさんの人々に力と知恵をあたえて下さった、みちびきの光でした。
わたしはジョウ・ウオルターズ博士という、カーシュナー先生といっしょに働いておられたこれまた酵素に詳しい医師を通じて、カーシュナー先生とお近づきになれたのです。このお二人の先生は、重病にかかっているのに食生活を改めようとしない映画スターやジェット機にのって世界を遊興をしてまわっているような人々にたいし、みどりの野菜類を先生方の考案された方式で提供して、健康を回復させておられました。飲みものがほしくてたまらない状況においたうえで、酵素をたっぷり合んだ膨大な量のジュースを飲ませたのです。まちがった食生活のせいで欠乏していた成分がこうして補給され、不健康なライフスタイルが引きおこしていた症状が消えていきました。
オクラとコンフリーは、みどりのドリンクのすばらしい素材です。育てるのも実にやさしいです。食用のハープや草を育てる余裕のない人は、みどりのドリンクに使う材料は生活協同組合や有機食品の店で人手すればよいのです。
わたしの夫のジョウは、オクラは眼に活力をあたえるすばらしい力をもった野菜だ、と考えていました。
コンフリーには異論を唱える人もおり、細胞を増殖させるとかんがえる向きもありますが、カーシュナー先生は、自分の患者さんの表皮ガンにコンフリーの湿布をすることで治癒にいたった例がまれではなかった!と報告しています。A・アルブレヒト博士(Albrecht,PhD)がつくった『フェンスの向こう側』(”The Other Side of The Fence”)という映画は、野草が現実にいのちを救う働きをすること、を伝えてくれます。この映画はPPNFのライブラリーでも所蔵していますが、エイカーズUSA社、(“Acres USA”)からも人手することができます。[編集部の註:アルブレヒト博士はウエストン・A・プライス博士の名著『栄養と身体の退化』の第2版の終章のひとつを執筆しておられます。]エイカーズUSA社はウォルターズ家のチャールズとフレッドの二人の兄弟が、アルブレヒト博士の考えに基づいて運営している会社です。
もうひとつのすばらしいみどりのドリンクは、フランシス・ポテンジャー Jr. 博士とともに仕事をしていたヘンリー・ベイラー博士(Henry Beiler)がかんがえたベイラー・ドリンクです。
わたしがはじめてベイラー・ドリンクを飲んだのは、1〜2週間の断食を体験したときのことです。断食期間中に欲しいと思った食品はこのドリンクだけでした。
ベイラー・ドリンクはグリンピース、セロリ、ズッキーニ、パセリの等量ずつとこれらの青物全体とほぼ同量の水とでつくります。水にグリンピースを入れて火にかけ煮上がらないうちに残りのセロリやズッキーニなどを加えて、ミキサーにかけます。パセリはミキサーに絡まないよう、前もって刻んでおきます。出来上がったベイラー・ドリンクは濃厚なクリーム・スープ、あるいはつぶして裏ごしにした野菜みたいに粘っています。ポテンジャー博士はこれに香辛料をくわえて召し上がっていましたが、わたしはバターと塩で味付けをするだけにしています。
なかには粘ったままの状態で食べるのが好きな方もいますが、バターをくわえたあとよくブレンドして食べるのがわたしの好みです。 2004年はズッキーニが豊作でしたので、PPNFの機関紙の2004年秋号には「ベイラー・ドリンクのすすめ」が掲載されています。これはカリウム・ドリンクに匹敵する効果をもつすばらしいドリンクですが、カリウム・ドリンクよりかんたんに手早くつくれます。からだに活力をあたえ、体内のミネラル・バランスを改善してくれます。
ヘンリー・ベイラー著『食べものこそあなたの最上の薬』(“Food is Your Best Medicine”, by Henry G. Beiler,MD)を参照してください。この本もPPNFから人手できます。
ベイラー・ドリンクのもうひとつの長所は冷凍しておけるところです。からだが本調子ではないなあと感じたときには、すぐとり出して飲める、ありがたいアルカリ性食品です。
効き目の早い元気回復剤として大いにおすすめしたいのが、有機野菜のジュースに子牛の生まの肝臓を茶さじに3杯ほど、それにコリアンダーを一つまみ加え、ミキサーにかけてつくるドリンクです。
新鮮なトマトをベースにして作るジュースにはもちろん色々な長所がありますが、トマトの栄養素の一部は調理することでさらに栄養価が強化されるようです。ですから、瓶詰めにした有機トマトのジュースをドリンクのベースに使っても大丈夫です。エッグノッグやスムージー〔ミルクやヨーグルトにフルーツをくわえてミクサーにかけた飲みもの〕は手がるにつくれて、おいしく栄養価も高いので、朝食用のドリンクに好適です。
エッグノッグやスムージーはふつうヨーグルト、生クリーム、ミルク、ホームメイドのくるみミルクなどをベースにして、ここに生卵なりよく熟したバナナ(冷凍バナナでもかまいません)を加え、好みにしたがってイナゴマメ、イチゴ類(冷凍したものでもかまいません)、刻んだマンゴなどをくわえます。ハチミツ、キシリトール、ステヴィアなどを少量くわえて甘味をつけるのもいいでしょう。シナモン、ナツメグ、ヴァニラ、カルダモンといった香辛料を加えますと、栄養価も高くなります。
卵には手をかけすぎたくありませんので、わたしはまず他の素材をミキサーにかけた後に卵を加えて、フォークで混ぜることにしています。ことわるまでもありませんが、このドリンクに使うのは、放し飼いにして無農薬の餌で育ったトりの卵に限ります。
健康スープなどのレシピ
ー 健康にいいスープについてパットさんの知恵をわけていただけますか?
パットさん:野菜の摂取量を美味しく楽しみながらふやすもうひとつの方法が、スープにすることです。 ミックス・ヴェジタブルのスープ、ボルシチ、ガスパッチョなどなど、スープのさまざまにふれたあと、わたしの好きなサラダや穀物やデザートのレシピをご披露して、結びにさせていただきましょう。
PPNFとのかかわりあい、そして私の食養論 結び
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はじめに
ここにおよみ頂くのは、本誌vol.2〜5と続いたパット・コナリーさんの食養論の「むすび」です。
原文は2005年、「悟志会」の尊敬する姉貴分の姉妹機関であるPPNF(プライス・ポテンジャー栄養財団。本部は米国カリフォルニア州サン・ディエゴ市)の機関紙である“Health and Healing Wisdom”(『健康と癒しの知恵』に連載されたインタヴュー記事で、聞き手は同紙の編集員です。
PPNFは、ウエストン・プライス博士の記念碑的名著『栄養と身体の退化』の土台となった膨大な調査資料やポテンジャー博士の研究業績等々、口腔医学の発展には欠かすことのできない調査と発見をなしとげた知の巨人たちの貴重な資料の保存・データベース化を第一の使命とする一方、市民にたいする健康・健康食教育にも力を入れて精力的に活動しています。
プライス博士のかかれた、人類の健康にとって必読の「古典」ともいうべき同書は1973年、「恒志会」の創立者である片山恒夫博士が私財を投じて日本語版の刊行にふみ切られ、これをふまえて2010年には「恒志会」が増補・改訂を加えて読みやすくしたペイパー・バック版を刊行しましたので、しだいに世に知られつつあります。
パットさんはご主人である歯科医のジョンさん(ハーバード大歯学部卒。故人)とともにPPNF創立の原動力となられ、2010年11月に急逝されるまで、全生涯をPPNFの発展に捧げてこられました。
プライス博士の名著の日本語版刊行を機にして片山博士と親交をむすばれたパットさんは、PPNFと「恒志会」が深くつながる土台をつくって下さった最大の恩人です。
私は1982年だったかと記憶しますが、米国政府の人物交流プログラムのおかげで1月余りにわたり米国各地のソ連(いまはロシア)研究センターを訪問する機会に恵まれました。訪ねたい大学・研究所は全米のどこを選んでもかまわない、訪問の合間には、たとえば大り一グの試合をみたいなら現地のヴオランティアに手配する、中西部の長距離ミサイルの発射サイトが見たいならそれもアレンジしてくれる、という行き届いたプログラムでした。
その際片山博士のご希望もあり、プログラムの中に半日ながらサン・ディエゴに足を延ばす計画を入れていただいて、壮年のパットさんご夫妻にお目にかかることができたのです。ジョン先生はつよい信念を柔和で穏やかな微笑みに包みこんだチャーミングな紳士でした。初対面の私に対し遠来の親族に接するような、親愛に満ちた笑顔を絶やすことなく話しかけてくださるパットさんご夫妻とご一緒していますと、何ともいえない安らぎにみたされ、自分が目の前に軍艦の並ぶ米国切っての軍港都市にいることも忘れ去っていました。
パットさんは、同時代の人びとだけでなく子々孫々の生活環境も視野に入れて、真の健康とは何か、そのための健康食はどうあるべきか、を熱情をこめて探求し続けられた「求道者」であり、そこから得られた貴重な知恵の実は惜しげもなく他者に提供されましたが、その際押しつけがましさは一切出されない、何よりも礼譲の人と、学びと悟りの人でした。
数年前のクリスマスのことです。筆不精の私としては珍しくパットさんに長めのグリーティング・カードをおくり、末尾に “My wishes are that you will have wonderful holidays and a very happy 2006, and that we all rediscover ways to live more peacefully together on this earth we share.” と記しました。
するとさっそくパットさんからお返事をいただいたのですが、上にあげました舌足らずの文句が気に入ったと言って下さったうえ、なんと「この文句を使わしてもらってもいいだろうか?」と尋ねてこられたのです。英語を母国語とするわけでもない、一異邦人に過ぎない者の言葉に対してすらパットさんが示されたこの高貴なまでの奥ゆかしさを思いだすごとに、胸があつくなります。
地上天使として世のため人のために尽くしぬかれ、今は天から働き続けていて下さるパットさん(1926年5月6日〜2010年11月18日。享年84才のご生涯でした)に心一杯の感謝をささげます。
鈴木博信 (2011年9月5 日)
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健康スープ ー 野菜の摂取量をふやす知恵のひとつ
パットさん:楽しみながら野菜の摂取量をふやす方法のひとつがスープにすることです。この点はさきほど〔前号参照〕申しあげました。
野菜スープは、体内の微量元素のバランスを良くするのも助けてくれる、元気の出る食べ物です。調理にかける時間を短くして手早く野菜スープをつくるには、スープにする野菜をまずフード・プロセッサーかマンドリーヌ〔材料を千切り・うす切りにする調理用具〕で細かくつぶして、それからさっと蒸すとよいでしょう。
わたしは、食卓に出す直前にこうして用意した素材をブレンドするようにお勧めしています。そうすると香りも味わいもたっぷりと保たれると思います。とくにハーブ類やスパイス類を加えるさい、そうなさることです。この点に気をつけるだけで味にうるさい方でも、「うん、これはいける」と気に入ってくださる場合が多いと思います。
ミックス・ベジタブルのスープは、冷蔵庫が一杯になって野菜を保存するスペースに困ってぎゅうぎゅう詰めにしたりしなくてすむ、良い方法です。
風味を良くするために、わたしは牛肉をシチューにしたり蒸したり、チキンやラムの骨をぐつぐつ煮たりするのに使ったばかりの鍋に、いろいろな種類の野菜を入れることからスタートするときがあります。
そのときに使う野菜のレシピはトマト・ジュースをベースにして、そこヘポテト、にんじん、セロリ、玉ねぎを入れ、そしてありあわせの様々な野菜も加えます。これがわたしの基本的なレシピです。
骨を入れて煮ますと、一昧旨昧が加わります。
わたしの祖母は、そのほかキャベツは欠かしてはいけない、と言っていました。ただし煮すぎることだけは避けなさい、と言っていました。スープが煮立って火をおとす直前の、さいごの瞬間にキャベツを入れるのが祖母の流儀でした。一 野菜スープが野菜スープ煮になってしまい、もう少し水気がほしい、つまりスープがほしいというときはトマト・ジュースを足してやるとよろしい。
野菜類を蒸したときに使ったお湯を使うのも勿論けっこうです。反対にスープ分か多すぎて水っぽいと思うときは、煮て裏ごしにするかミキサーにかけて砕くかした野菜を足してやればいいのです。
ボルシチ、カボチャのスープ、ガスパッチョ
たいへん体にいいスープのひとつがボルシチです。わたしたち米国人はボルシチと聞くとビート入りスープのことだと単純に思い込みがちですが、ロシア語では「ボルシチ」というのは「スープ」を意味しています。わたしのボルシチは、ビート、セロリ、にんじん、タマネギ、そして好みでキャベツかトマト・ジュースをくわえます。基本になるのは根菜類ですので、ボルシチはポタシウムと微量ミネラルをたっぷり摂るのに好適です。
新鮮なサワー・クリームが、ボルシチの味をぐっと引き立てて美味しくするトッピングです。
乳製品にはアレルギーがあって受け付けないという方は、サワー・クリームのかわりに自家製のマヨネーズをトッピングに使うという手があります。バルト海沿岸のラトヴィア出身の友人が伝授してくれた方法です。わたしが編集した料理レシピ集にのせていますので、参照してくださると幸いです。
カボチャのスープが、わたしのもうひとつのお好みスープです。材料はカボチャをカップ6杯分ほどと、ぶつ切りにしたタマネギ1個、ざく切りにしたリンゴ2個です。調味料としてこれにニンニク、カレー粉、ショウガを加えます。
まず野菜類を蒸してから、蒸すのに使ったお湯もろとも調味料も一緒にしてミキサーにかけます。このときリンゴも一緒にブレンドしますが、仕上げにココナッツ・クリームを加えるのもおつなものです。若干のタンパクと質のよい脂肪とそしてすばらしい風味が加わるからです。
カボチャ・スープなら、消化器系に問題を抱えている人もほとんどの場合、問題なく食べていただけます。ほかの炭水化物だとうまくこなせない人でも、楽しんで摂ってもらえると思います。調理に時間をとれないときも、前もって摺り下ろして冷凍しておいたカボチャを使用すれば心配ありません。
アルフレダ・ルーク(Alfreda Rooke, PPNF初代学芸員)は、彼女が「骨スープ」と名付けたものを好んでつくっていました。行き付けの肉屋さんにスライスしてもらった牛の骨でスープをつくるのです。スライスした骨をポットに入れ、そこへ熱湯を注いだうえで電熱トレーにのせ、24時間から32時間ほど、骨がほとんど溶けてしまうまで置いておくのです。
彼女はこのスライスした骨を、ときにはミキサーにかけて骨粉として使っていました。
ガスパッチョは暑い季節にリフレッシユできるすばらしいスープです。「ミキサーにかけたサラダ」といってもよいでしょう。
ガスパッチョに使う基本的な材料はトマト、キウリ、パセリのほか手ぢかにあるものはライム・ジュースかレモン・ジュース、グリーン・オニオン、セロリ、こしょう、にんにく、等々なにを加えても大丈夫です。素材をミキサーに入れ調味料を加えて味をととのえて、冷たいまま食べるなり飲むなりすればよいわけです。うら濾しなどする必要はまったくありません。
一 生野菜は健康食のかなめなのですが、わたしたちは「きまりきった」サラダしかつくらないということになりがちです。新しいサラダのつくり方をいくつか、わたしたちに教えていただけませんか?
それと、生野菜やサラダを召上がるときに、まえにお触れになった「虹色のダイエット」という考えをどんな風に生かしておられるか、お話しいただけるとさいわいです。パットさん:食事をつくるときには、「紅色のダイエット」にふくまれる野菜の一覧表を冷蔵庫の扉に貼って、栄養上のチェックリストにしています。
多様な色彩の野菜をとりあわせるという考え方は、視覚的にも(心理の上でも)栄養学からも大切です。
それにおとらず大事なことは、大きなパレットの上に紅色にぬりわけた野菜の一覧表が食卓から見えることで、新鮮な生野菜に対する食欲が高められるのです。
サラダについて
サラダについてふれますと、わたしは普通グリーンサラダの基本になるレタスかホウレン草をお出しする一方、それとは別に回転盆の上に用意しておいた、様々な野菜の太切りやうす切りや細かく刻みこんだものを好みでとり分けてレタスなりホウレン草の上にのせていただくことにしています。
こうしますと、家族のものもお客さまもレタスやホウレン草のほかはご自分で様々な選択ができますし、食べなれていない、なじみのない野菜を試してみることもできるのです。
こうした選択やら実験やらをしていただく健康野菜としてはアボカド、カリフラワー、セロリ、キューリ、マッシュルーム、オリーヴ、タマネギ、カブラなどを用意することにしています。
こうした「取りあわせ」サラダの上にかけるトッピングとして、野菜のタネ類やナッツ類も用意します。サラダをつくるときにわたしが使うもうひとつの基本の食材は、刻んだビーツです。わたしは1リットルほどの生のビーツを刻んで広口のガラス瓶に入れ、アイルランド南部のケルト海の海水からつくるティースプーン1杯の塩を入れ、これに半カップの水、3分の1カップのリンゴ酢、4分の1カップのハチミツを加えます。
こうして出来る塩味の液はその後も1〜2回は使えますので、調理にかける時間がそれだけ短くてすみます。
この塩味の液にはビーツのジュースをくわえて薄めてから、ゼリーで固めてゼリー・サラダにします。
ビーツの代わりに刻んだニンジンでおなじようなゼリー・サラダがつくれます。こちらはニンジンに刻みショウガを加えてつくります。
ゼラチンを使ったサラダをつくるとき、サラダの素材はすべてまえもって刻んでおくこともあります。刻んだキャベツのゼラチン・サラダをつくるときにアップル・ジュースやパイナップル・ジュースを加えてやりますと、いい香りを添えることができます。
「ウォルドーフ・サラダ」という名のさいの目に刻んだリンゴ、クルミ、セロリをマヨネーズであえてつくるサラダがあることはご存知の通りですが、ときによっては生野菜をまぜてサラダにするのではなく、生野菜そのまま食べたいときもあるかもしれません。
最後になりましたが、調理ずみの鮭かイワシに、刻んだセロリ、ヤシの実の芯をまぜて自家製のマヨネーズで和える、といったサラダもおつくりになるといいでしょう。
お気に入りの穀類は?
一 毎日お摂りになる穀類のうち、お気に入りのものをいくつかご説明ねがえますか?
パットさん:穀類では生のタネ類とムーズリがわたしのお気に入りです。
生のタネ類はすぐそのまま食べることのできる、インスタント食品といっていい食材ですが、携帯もしやすい上タンパク質とセンイ質をしっかり含有した、朝食に相応しい食品です。
わたしはヒマワリ、アマ、ゴマ、チーア〔米国南部やメキシコにおおいサルビア系の植物〕のタネを朝食の食卓に出すことにしていますが、わたし自身はじぶんの体質の関係でヒマワリのタネは摂らないでカボチャのタネで代用しています。自分用としては、カボチャのタネ、チーアのタネ、機械にかけて外皮をとり去ったゴマ、アーモンドという組合せで食べています。
すりつぶしたアプリコットのタネ、亜麻のタネ、クルミ、アーモンドといった組合せも良いでしょう。消化を助けるために、まずコーヒー挽きで磨り潰してやるといいでしょう。その上から生クリームなり、ココナツベミルクかココナツ・クリームをかけてやると、美味しい一皿になります。干したスグリの実、干しブドウ、シナモンなどを加えますと、一段とすばらしい風味になります。
ムーズリは、少量のパイナップル・ジユースをかけて一晩おいておくと、タネ類がジユースを吸って消化しやすくなります。
ムーズリに使うタネ類はすりつぶしたものでもそのままのものでもかまいません。
わたしはジュースを吸って柔らかくなったものに水をすこし加えてかきまぜ、ペースト状にします。そして生クリームかココナツ・クリームをかけます。マーマレードか新鮮なフルーツを加えますと、ずっと風味が増し量も多くなります。
ココナツ・クリームは缶を空けるまでは冷蔵庫に入れる必要がありませんので、タネ類、小さなコーヒー挽き、マーマレードなどと同様、携帯用に便利です。
一 食事にアクセントをつけるのにおつくりになるお好みソースのたぐいも、二、三教えていただけますか?
パットさん:生のサルサは手軽につくれる、すばらしいソースですね。使う素材はすべて手まわし式のサルサ作り器に手早く刻みこんでぐるぐる回すだけで出来上がりです。わたしがサルサ作り器に入れるのは、トマト、ピーマン、タマネギ、トウガラシ(人れなくてもかまいません)、そして少量のライム・ジュースです。コエンドロ〔コリアンダーをメキシコ料理ではそうよびます〕、二ンニク、ケルト海由来の塩を加えるのも良いでしょう。
グアカモルという名のソースは、潰したアボカドにこのサルサ・ソースを加えるとたちまち出来上がりです。
どちらのソースも、半熟卵、ポーチド卵やトルティーヤ〔メキシコ料理の主食であるトウモロコシ粉の丸型のうす焼き〕にかけると抜群に美味しくなります。
コエンドロはたっぷりのみどりを料理につけ加えてくれる、もうひとつの栄養たっぷりのソースです。わたしはコエンドロ、バジルかパセリを基本にして、これに磨り潰したアーモンドやオリーヴ油といった素材を加えます。
デイヴィッド・ウィリアム博士はコエンドロ・ペーストに、「貧しい人の(重金属排出を助ける)キレート化剤」、あるいは「キレート化作用をもったペースト」と命名していて、つぎのような美味しいレシピを提案しています〔キレート化というのは生体の中で葉緑素や血色素が受け持っている化学作用〕。
すなわち、刻んだアーモンド2分の1カップ、小ぶりのニンニクの球根2個、ティースプーン2杯分のライム・ジュース、コエンドロひとつかみ、ティースプーン6杯分のエキストラ・バージン・オリーブ油をフード・プロセッサーに入れ、ほかにお好みの薬味があればそれらも加えてプロセッサーを回す。
ひとつかみしたコエンドロがかさばるくらいの量なら、加える素材の量を2倍にする。ウィリアム博士は、この美味しい香辛料ソースを1目にティースプーン2,3杯摂るなら数週間もすればあなたの体内に残留していた重金属の排出が促進される、と述べています。
こうしたソース類はかんたんにつくれるだけでなく他の野菜類をこれに浸して食べるのにも適していますので、野菜や生の食材の摂取量を大いに高めてくれます。ヒモカボチャのトッピングにもいいものです。ぐんと味が引きたちます。
これらのソースをおつくりになれば家族の方々もお友だちも大いに喜んでいただけること、請け合いと申上げていいでしょう。
デザートあれこれ
ー お好みのデザートもいくつかご紹介いただけますか?
パットさん:わたしの好きなデザートのひとつは新鮮なパパイヤと凍らせておいたマンゴーをまぜてつくるシャーベットです。自家製のアイスクリームも好きです。素材に使うのは柿とクリームだけです。
作り方はまったくカンタンです。柿を洗い芯をくりぬいてから小さく刻んでロウ引きしたクッキー・ペイパーの上にのせてから、刻んだ柿が固くなるまでフリーザーに入れます。固くなったところで、これをプラスティック・バッグに移しておきます。
さてアイスクリームつくりです。生クリーム4分の1カップから1カップをミキサーに入れて回転させながら、冷凍してあった刻み柿をそこへ落していきます。柿の分量が生クリームを上まわる割合になると風味がよくないです。
柿は抗酸化作用もつ栄養素をたっぷり含有していますが、このアイスクリームはたいへん好評なようです。
この手づくりアイスクリームを柿以外のフルーツで試してみたり、カルダモンやシナモンといった香辛料を使ってみるのもいいとおもいます。乳製品に対するアレルギーのある方は牛乳でなくココナツ・ミルクをお使いになるといいでしょう。
生のリンゴやナシ〔西洋梨〕でつくるソースも、手早くつくれて美味しいですよ。少量のパイナップル・ジュースをミキサーに入れ、そこヘリンゴかナシを刻んで加えるだけです。
わたしはナシのときはショウガを加えるのが好きです。カルダモンやナッツメグをくわえるのもいいと思います。生のリンゴでつくるソースのときはカルダモンがとてもよく合います。
わたしはこうしてつくったソースをシヤーベット皿に入れ、ピイマのクリームをかけて食卓に出すことにしています。
メルヴィン・ペイン博士はピイマ・クリームがことのほかお気に入りで、わたしによく所望されました。(編集者註-ピイマ=piimaというのは乳製品を発酵させる酵素の一種。 www.elitealternatives.netを通じて人手可能。)
アボカドのムースは栄養たっぷりのデザートです。血糖値の低い人やほかのデザートを体質上うけつけない人にとっては、これは大事なデザートのひとつです。
ブラジルには、アボカドを使ったデザートがいくつもあります。たとえばアボカドにライム・ソースをかけ泡立つくらいまでよくまぜたデザートの場合は、甘みをつけたうえで(わたしはステヴィア[キク科ステヴィア属の多年草からとれる甘味は蔗糖よりずっと小量でずっと甘い]で甘みをつけます)生クリームをかけ、シャーベット・グラスに入れてサーヴします。
ライム・ジュースのかわりにほかのフルーツ・ジュースを使いますと、ブラジル式アボカド・ジュースとはまた風味のちがったものができます。わたしはときおり色々なフルーツを加えたりココアパウダーを加えたりといった”実験”をしています。血糖値に問題のある方は、甘みをつけるのに砂糖をさけてステヴィアを使うことをお勧めします。
クッキーも、手早くつくれるデザートです。わたしは句の果物を丸ごとつぶしてピュレーにします。種類にはこだわりません。タネもミキサーに入れて摺りつぶして混ぜてしまいます。これをろう引きペイパーに適当なかたまりにしてのせ、一晩乾かすと出来上がりです。
水分を飛ばすだけのこのクッキーは栄養素もほとんど失われずにすみます。オヅンを見守っている必要もなければ黒焦げクッキーにしてしまう恐れもありません。
わたしのメレングの作り方はこうです。卵の白昧にハチミツを加えよくかきまぜて、メレングをつくり、これに干したココナッツ(干したココナッツをコーヒー挽きに入れて挽きつぶしたもの)を加えます。
ヴァニラを風昧づけに加えるのもけっこうです。メレングにはごく低い温度で火をとおします。それがすみましたら、オヴンのなかに冷めるまで置いておきます。
ー すばらしいレシピや料理法というのは、時として思いがけない閃めきから生まれるようです。普通には思い付かないような昧の組合せをいくつか考案なさったようですが、その一端をご披露ねがえますか?
パットさん:いま思いつくのは、マンゴとパパイヤを使ったフルーツ・シャーベットです。「この2種類の果物は、ほかの食品を摂っていたときにおこることのある食道裂孔ヘルニア〔横隔膜の食遊芸孔から胃の一部がはみ出してくる〕の痛みを軽くしてくれる」、と書いてあるのを読んだとき、この2種類の組合せを試してみようと決めたのです。
パットさん流「携行食」のすすめ
一 単身者用の料理、通効用や旅行に出かけるときの「携行食」、あらかじめ料理をすませておく保存食のありかた、「だれもかなわない、きわめつきの健康食」を手早くつくるコツ、などについてもパットさんがおもちの知恵を分けていただけますか?
パットさん:1人用の食事についていつも申し上げているのは、温めればすぐ食べられるような食品をいつも冷凍庫に用意しておきなさい、ということです。
これは難しいことではありません。 1人分の食事を用意する人は、ほとんどの料理をつい作りすぎてしまうからです。チキン(とくに足)、ターキー、子羊の骨などからとったスープに冷凍した豆やコーンを入れるとおいしく食べられます。出来上がりにニンジン、タマネギ、セロリといった新鮮な野菜を加えるとさらにおいしくなります。
風味づけにはお好みでトマト・ペーストなりワサビなりマスタードなり味噌なりを使えば、おいしさも格段に上がるでしょう。
摺りおろして冷凍した冬カボチャも、手早く健康スープをつくるのに役立つ食材です。
その他手軽に食事をするために常備しておくといいのが、キンカンのマーマレード・ジャム、ビーツのピクルス、コールスロー(酢づけにした刻みキャベツ)、野菜、ペストス〔主にパスタ用にバジリコ、ニンニク、オリーヴ油などでつくるソース〕といった食品です。これらの常備食品と組合わせることで、どんなときにも、火を入れない生の食材を少しでも確保できるわけですね。
携行食 一日本風にいうとおべんとうー を用意するときは、脱水器が大いに役に立ってくれます。自分でつくった干しザケやラム、手作りのビーフ・ジャーキーは栄養価が高く携行用のタンパクとして好適です。野菜も同じように乾燥ヤサイの「チップ」にしてパラダ海の塩をふりかけておくと、携行用のいいスナックになります。
脱水器はフルーツやナッツ入りのクッキーを「焼き上げる」はたらきもしてくれます。
刻んだアーモンドや干しイチジク入りのミニ・パイもすぐにつくれるスナックです。火を入れないナッツ類、うす切りにしてパリパリの状態で食べられる野菜類にれはアーモンド・バターをつけてたべるとおいしいです)、チーズ類、健康な(砂糖を入れない)マフィン、乾燥フルーツなどもスナックとしておすすめです。
これらの食品は保存も利(き)いて便利です。
スムージー〔前出、ミキサーにかけた果物とミルクやヨーグルト、アイスクリームなどをまぜたデザート〕も携行すると色んな風に活用できますし、おなかもけっこうふくれます。どんな果物を主体にするか、風味ごとに何を使うか、は好みでいくらでも変化させることができるばかりか、液体・粉末のどちらであれ自由にサプリメントを付加することもできる便利で手間いらずの、風味あふれる食品なのです。
ー このインタビューのはじめのところで、あなたはご自分が書かれた『カンディダ・アルビカンス 酵素ぬき料理の本』(“The Candida Albicans Yoast-Free Cookbook”)のことを話してくださいました。他におすすめいただける書物がある
でしょうか?パットさん:はい。穀物アレルギーの人にありがたいレシピが、エレーヌ・ゴットシャルの『悪循環を断ち切る一消化器を健康にするダイエット 』(Elaine Gottscha11/‘Breaking the Vicious Cycle: Intestinal Health through Diet )にたっぷり紹介されています。サリー・ファロンの『栄養食の伝統』(Sally Fallon, M.A. ”Nourishing Traditions”)、ジェン・マクマニマンの『乾燥させなさい ーきっと好きになりますよ』(Gen MacManiman. ”Dry lt? You’ll Like It”. これは脱水乾燥させる食品のレシピをしめした本です)などもよい本です。(以上の書物はパット・コナリーさんの著書もふくめ、すべてPPNFから人手できます一編集部。)
ー むすびとして、パットさんに食事づくりの「心理学」について一言語っていただきたいとおもいます。
食養生にあきてくる、料理づくりに気づかれする、健康食のためのあれこれの自己規律、家族に健康食を「売りこむ」ための奮闘・努力 ー といったことどもをどううけとめるか、です。
こうした点は、健康な食習慣を身につけるためには、だれもが超えていかなければならないハードルだと思うのでが・・・。パットさん:ダイエットに飽きてくる、という問題にどう対処したらいいかといいますと、あなたが食べても良いと言われているもの(つまり、食べてもアレルギーなどをおこさずにすむ食品)の枠内で選択すればよいと思います。
わたし自身はそんなときには、摂取するのを止めていた、しかしとりたてて害にはならないいわば「趣味の」食品、気晴らし食品を食べてやりすごすことにしています。
それにくわえて、これまでためしたことのない種類の、あなたにとって害にならない ー アレルギーをおこさない 一 金粉粒や新しい野菜、ハーブ、スパイス、調味料をとり入れて、食事を変化させていくことですね。
料理作りに疲れてきたときのわたしの対処法は、料理にかかる時間を短縮してくれる、できのいい切り刻み用の道具を使うこと、手を加えずに生で食べるものの量をふやすこと、です。
健康食のための自己規律=ルールの問題に対するわたしの助言は、「食生活を変えるという実験をはじめた人は少なくとも3週間は続けていただきたい」ということです。
そうした上で初めて自分のエネルギーや気持ちにプラスの変化が起きたかどうか、を分析できるのです。
その時点で新しい食生活の命じるところをそっくり受け入れることができないというなら、良いと思った点だけでいいですからそれをご自分の食習慣にとり入れる努力をしてごらんになることです。
このようにして新しい食事プログラムの「実験」をさらに重ねていきますと、新しい食生活の中へ古くから食べてきた食材を選択的に組み込もうとすると問題がおきること、むしろほとんどの問題はそこからおきるということに、しばしば気づくことになります。
このように実験を重ねて行ってより健康な食品のもたらすプラスが分かってきますと、食習慣に必要な変化かおこり、「変えてよかった」という実感を味わうことになるでしょう。
食習慣のルールを作る際にまちがいなく役立つ重要な考えを申しあげておきます。食品・食材というものはどれをとっても害を与えるか逆にプラスの変化や癒しを与えるか、のどちらかの「力」をもつ存在だということ、この点を理解しておいてほしいのです。
すべての食品は、プラスあるいはマイナスの作用をする強力な存在なのです。
害を引きおこすか利益になるか、を決めるのは人工食品であるか神様がお創りになったものかという点に尽きるものではありません。それを食べる人自身のからだと栄養上の必要 ーその人の代謝のタイプやどういう食品を摂るとアレルギーを呈するかということも当然そこには含まれますー に適合しているかどうか、という点も重要です。
わたしたちは、一人ひとりが違った存在なのです!
この点をくわしく解きあかしてくれているのが、ウイリアム・ウォルコットの『代謝のタイプによるダイエット』(William Walcott, ”The Metabolic Typing Diet”)です。 PPNFで人手していただけます,
人体に有毒な物質があふれ汚染が進む現代の世界で健康なライフ・スタイルを維持していくことは、目ましに大きな挑戦にこたえていくことを意味します。
より質の良い生活とより健康な老年 ーもちろんより健康な青壮年ー を望む人は、そうした目標を達成するために自分の運命を人任せにせずに自ら引きうけて進まねばならないはずです。
生命 ーと死ー は相当な程度まで、わたしたちが何を食べるかで決まっていきます。
健康食を家族の人たちに「売りこむ」ときの最大のカギは、家族の人たちが好んで食べ、美味しいといっている食品は、「この範囲までは受け入れて作ってあげる」、ときめることです。
そこからすぐ出てくる第2のカギは、食べ物をめぐって家族と対立することだけは決してしてはならないということです。
すなわち、「これは健康にいいのだから食べなさい」と押しつけたり、ガミガミ説教がましいことを言うのは断じて控える必要があるということです。
そういう慎みを守った上で健康食を出してあげれば、家族の方々は食べてくれるのがふつうです。
ー パットさん、ほんとにありがとうございました。聞き手をさせて頂いたおかげで、たっぷり学ばせてもらいました!
ほんとに楽しいインタビューでした。 (完)
歯を食いしばった時、もしくは、こすり合わせた時、何が起きるのか
PPNF機関紙「HEALTH & HEALING WISDOM」2003年夏号 vol.27 No.2より転載
ジェリー・ミッテルマンDDS
3つの現象が起きる。わたしたちが歯を食いしばったり、こすり合わせたりするのは、たいてい、何かに夢中になっている時である。もしくは、睡眠中のこともある。自分では気づかないまま、無意識にやっている。 しかし、わたしたちの身には聞違いなく3つの現象が起きている。
歯は機械的な使用によってすり減るものだろうか。硬い食物のなかに、避けたほうがいいものはあるだろうか。
硬くてよく噛む必要のある食物は、歯茎と、歯と、それを支える骨を丈夫にしてくれる。刺激を与えてそれらの健康を保つという効果がある。もちろん、食物に含まれた細かい砂粒のような研磨性粒子によって、歯がすリ減ってしまう場合もある。一部の古代人の頭蓋骨に、この現象が見受けられる。
しかし、咬合面の磨耗は、ほとんどの場合、こすり合わせることによって生じるものである。人はたいてい、無意識のうちに歯をこすり合わせている。歯をこすり合わせている人のそばにいると、顎の筋肉が小刻みに動いているのが見えるはずだ。
顎を閉じた時に上下の歯の噛み合わせがきちんとしていないと、この現象が起きる。歯をこすり合わせるというのは、咬合面の干渉をすり減らそうとする無意識の試みなのだ。
干 渉
顎を閉じようとする時、歯の先端の一部がそれを邪魔する場合がある。ほかのすべての歯が噛み合わされる前に、この部分が反対側の歯にぶつかる。それが引金となって、歯をこすり合わせることになる。
干渉がある場合、次の3つの現象のどれかが起きる。
① 歯根周辺の神経が圧力を感知し、脳ヘメッセージを送る。これによって、干渉の部分をすり減らすために、歯をこすり合せるという現象が起きる。
② 時には、脳から顎の筋肉に対して、“干渉部分を避けろ”という信号が送られる。楽に口を閉じることのできる場所を見つけるためである。そこで、問題箇所を避けるために、顎の動きは通常から逸れて、どちらか一方へ偏ることになる。例えて言えば、靴に砂利が入った時に、びっこをひくようなものだ。とくに意識してやるわけではない。神経が脳にメッセージを送り、脳が脚の筋肉に信号を送り・・・そして、びっこをひく。
一人一人の歩き方が異なる理由も、部分的にはこれで説明できる。実を言うと、“噛み方”も一人一人異なっているのだ。
砂利は脚(もしくは背中)の筋肉に痙學を引き起こし、咬合面の干渉は顎の筋肉に痙攣を引き起こす。検診のさいに、われわれ歯科医が顎の筋肉とくに、外側翼突筋(上側の大臼歯の奥にある筋肉) を触診する理由はそこにある。この筋肉の痙攣が、顎関節の障害を示す最初の症状のひとつなのだ。
ここに筋肉の痙攣が見られると、上顎と下顎がしっくり噛み合っていないことがわかる。これはよく見られる現象だろうか。答えはイエス。研究によると、20%の人が問題を抱えているそうだ。
そのため、咬合面に干渉があると、人はその箇所をすり減らそうとして、無意識のうちに歯を食いしばり、こすり合わせる ー そして/もしくは、その箇所を避けるために、顎が変則的な咀嚼パターンヘ移行する。そこでまた新たな現象が起きる。
③顎を閉じる際に大きな圧力がかかる(約300ポンド/平方インチ)。研究によると、これは歯の先端に62,000ポンドの圧力がかかるのに等しいそうだ。
一部の歯根周辺の骨はこれに耐えることができない。これだけ大きな圧力を受けると、歯を本来の場所にしっかり固定しておけなくなる。そのため、こすり合わせる際の圧力によって歯がゆるみ、脇へずれてしまう。歯を支える顎の骨が溶けていく。
一般に、歯を食いしばる、こすり合わせるというケースには、筋弛緩剤を投与することになっている。だが、これは症状を軽減するだけで、根本原因の解決にはなっていない。
根本的な治療には、歯科的および栄養学的な矯正が必要である。
歯科的な矯正法としては、まず、患者にMD Applianceのような装具(もちろん、表面がソフトな“ナイトガード”などはダメ)を着けさせて、筋肉をリラックスさせる。これによって、ふたたび正常な位置で願を閉じることができるようになる。
次に、咀嚼の動きのバランスを慎重にとりながら、正常な位置閉係へもどすことが必要になる。
栄養学的な矯正法としては、まず、砂糖と精製炭水化物を日常の食物から削除する。これらを摂取すると、血糖値が不安定に上下して”不安感とイライラ”を引き起こし、よけい歯を食いしばったり、こすり合わせたりするようになるからだ。
それに加えて、骨のカルシウムが失われていく。真っ先にカルシウムを失うのが顎の骨である。もうひとつ大切なのは、顎の筋肉をリラックスさせ、不安感を和らげ、骨の形成を肋けてくれる栄養素を加えることである。
この話題については、今後も論じていきたいと思っています。その前に何かご質問があれば、あるいは、こちらで何か力になれることがあれば、ご運絡ください。
Holistic Dental Digest PLUSの許可を得て転載。
..........................................................................................................................版元: The Once Daily, Inc.
ニューヨーク市ウエスト・エンド・アヴエニュー2A
電話&ファクス 212-874-4212
メール jmittelman@nyc.rr.com訳 山本やよい
デジャ・ヴュ・・・またしても
ベアトリス・トラム・ハンターMA
2002年11月、米国心臓学会(AHA)の年次総会で、ウェイト・コントロールにはどのダイエット法がもっとも効果的かをめぐって、活発な議論がおこなわれた。低炭水化物/高蛋白か、それとも、高炭水化物/低蛋白か。前者の代表がアトキンズ・ダイエット。後者の代表がAHA推奨のステップ1ダイエット。こちらは連邦政府から公式の推薦も受けている。この正反対のダイエット法のおかげで、栄養学者やフードライターが二極に分かれて対立するようになり、AHAの総会でついに爆発したものと思われる。多数の研究発表が、低炭水化物/高蛋白ダイエットに軍配を上げるデータを提出した。
デューク大学の研究グループから、アトキンズ・ダイエットとAHAダイエットを比較するために120名の被験者を6ケ月にわたってモニターした結果が報告された。被験者の体重減少は、アトキンズ・ダイエットでは31ポンド、AHAダイエットでは20ポンドだった。アトキンズ・ダイエットの場合、善玉コレステロールとも呼ばれる高比重リポ蛋白の値が増加した。
アトキンズ・ダイエットは、多くの栄養学者から、コレステロール値を上げ、心臓病を誘発するダイエット法として、くりかえし非難されてきたが、総会で発表された研究には、この不吉な予言を裏づけるものはいっさいなかった。逆に、有益なプラス面があるように思われる。ある研究発表は次のように結論している ーーエネルギーを抑える高蛋白ダイエットは、心血管病の危険を減らし、
高インスリン血症(血液中のインスリン濃度が高いため、糖尿病になりやすい)を抱える被験者の場合、2型糖尿病の発症を遅らせる効果がある。
別の研究発表はこう結論している 一一短期間であれば、LC(低炭水化物)ダイエットのほうが、体重を減らすにも、血清炎症マーカーの数値を下げるにも、カロリー面で同等のLF(低脂肪)ダイエットより効果的である。
AHA総会における研究発表が巻き起こした大論戦の結果は、低炭水化物/高蛋白ダイエットに好意的なようなので、高炭水化物/低蛋白ダイエット支持派はあわてふためいている。 《Nutrition Close-Up》という雑誌の社説の見出しは、それをこう要約している。
“研究結果が疑わしいときは、その信頼性に疑問を持とう!”。「科学者団体からアトキンズ・ダイエットの提唱者たちに対して、リサーチをおこなうようにとの勧告が何年にもわたってなされたため、リサーチが実施された。ところが、勧告した側はそのリサーチの結果に不満を持っている」。
栄養学者の一部は、蛋白質を排斥して炭水化物を重視しようというフードガイド・ピラミッド(政府が作成した食生活指針のガイド)を、声高に非難するようになっている。
過去にもこれと似たような騒動が起きている。1946年、『Meat Three Times a Day』(1日3食、肉を食べよう)と題した本が出版された。著者は《Consumers’ Research》(消費者リサーチ)という雑誌の創刊者であり出版人であったフレデリック・シュリンクと、その妻で、《Consumers' Research》の執筆者であったメアリ・キャサリン・フィリップス。
『Meat Three Times a Day』は、シュリンクとフィリップスが栄養に関する科学的および専的文献や、人類の食習慣の歴史を調べながら進めてきた、数年にわたるリサーチの結果を集大成したものである。2人の調査結果のすべてが1つの事実を指している。アメリカ人は肉(それも大量の肉)を食べて育ってきた。3度3度の食事に肉が出され、1食に数種類の肉を食べることもしばしばあった。
この本では、それまでに集められた、高蛋白/低炭水化物ダイエットの実践者たちが風邪や虚弱体質や感染性疾患に対してすばらしい抵抗力を持っていることを示す多数の証拠が、詳細に記されている。シュリンクとフィリップスは肉の効用を次のように述べている。「血液の製造と再生を奇跡のごとくおこなう。癲癇や偏頭痛を緩和する。怪我や火傷の治癒を速める。悪性貧血で命を失う危険のある者を回復させる。アルコールや病気に傷めつけられた肝臓を守る。吃音の克服を助ける。ニコチン酸欠乏症候群を治療する。結核の回復を助ける。日常的な飲酒者・喫煙者に必要な栄養を補給する。毒物や炎症から人体を保護する。老若男女すべての健康を守ってくれる。 しかも、読者のみなさん、注射も、錠剤も、薬剤もなしに、こういう魔法のような効果を得ることができるのです。お宅の夕食のテーブルでこの奇跡の物質を摂ればいいのです。その物質の名前は”肉”です」
この本が読者にもっとも強烈なインパクトを与えるのは、シュリンクとフィリップスが現代の論争を予見するかのような洞察力を示している点だろう。2人はこう述べている。「高蛋白もしくは肉中心の食生活こそ、肥満体の人々にとって効果的な痩身法である。肥満体の人々はおしなべて、穀物や澱粉食品、甘いもの、脂肪分の高い食品を大量に摂っている・・・きわめて多いのが、痩身のた
めのダイエットによって病気や栄養不足になり、体力の低下や倦怠感を招くケースである」シュリンクとフィリップスは、肉に加えて、卵、チーズ、果物、野菜、パン、バターも摂るべきだと勧めている。
『Meat Three Times a Day』は”健康のために糖分と澱粉を減らそう”と提唱している。まさにタイムリーなアドバイスだ。シュリンクとフィリップスはこう書いている。「食生活に肉を豊富に取り入れる利点を重視するときは、肉の代用品として摂る食物、もしくは、肉が手に入らない、わずかしか手に入らない、恐ろしく値段が高いといった場合に、大量に摂取することになる食物の欠点を考慮するのが、理にかなったことといえよう。“胃袋を満たす”ための食品が、現代アメリカの食生活の一部をつねに占めている」
また、“胃袋を満たす”澱粉と糖分について、そのマイナス面を著者は論じている。「糖度が極めて高く、ビタミンとミネラルがまったく含まれていないため、糖分を過多に摂取しないことが必要不可欠である。グラニュー糖、ハチミツ、ルートビア、炭酸飲料、アイスクリーム、あるいは、砂糖煮のスイートポテトや瓶詰めの果物といった食品など、甘いものを摂りすぎると、消化器系統に炎症を起こすことになり、食品や飲料に含まれる糖分が高ければ高いほど、その危険も高くなる」。
そう、ヨギ・ベラ(ヤンキ一ス往年の名選手)のセリフを借りれば、“デジャ・ヴュ、またしても”なのだ。
訳 山本やよい
ベアトリス・ドラム・ハンターは《Consumers’Research》のフードエディターであり、PPNF名誉理事会のメンバーでもある。 この記事は《Consumers’ Research》2003年4月号から、許可を得たうえで転載したもの。
アレルギー体質の人々は
なぜ口腔の健康に関心を持つべきなのか2007 vol.2
マージョリー・ハート・ジョーンズ(登録看護師)
マイニー博士と話をし、博士の著書を読むうちに、わたしはトム・ストーン(内科医、イリノイ州ローリング・メドウ在住)からよく聞かされていたことを思い出した。
決められた食生活を厳密に守っているのに回復がはかばかしくない、体調がいいとはとても言えない、と患者が愚痴をこぼすと、ストーン医師は次のように答えたものでした。「口のなかの治療をしないかぎり(この部分は、患者の症例に応じて、“詰物に使われているアマルガムを取り除かないかぎり”、“根骨を除去しないかぎり”、“虫歯を抜かないかぎり” などと変化する)、症状の改善は望めませんよ」
わたしもひょっとすると治療を先送りにしていたかもしれないが、6年ほど前、運命の女神の導きというか、歯が膿を持ち、痛みが止まらなくなった。抜歯が”正しく”なされないと、歯茎を再切開して歯槽を掻爬する必要が出てくる、という怖い話をあれこれ聞いていたので、ストーン医師に電話して指示を仰いだ。
ストーン医師は、彼と同じ哲学を持ち、今後の歯槽の感染を防ぐための技術を持っている歯科医を何人か知っていたので、その1人のところへわたしが行けるよう手配してくれた。
次に、根管充填を施した歯があるかどうか質問した。あった。1本だけ。膿を持った歯のすぐ隣に。
「それだ!」医師は言った。
「その歯を抜いてもらって、同時に、歯槽を清潔にしてもらいなさい」
これ以上歯を傷つけることなど想像もできなかったので、わたしはその指示を渋々歯科医に伝えた。こうして、膿を持った歯と、根管充填の施された歯の両方が、正しいやり方で抜かれた。ここでひとつ告白すると、辛すぎる体験になるのを避けるために、笑気ガスを少し吸わされたーーぜんぜん辛くなかった。眠りはしなかったが、しばらく感覚が麻痺して、そのあとに大きな安堵感があったことだけを覚えている。
抜歯後、わたしの健康は目に見えてよくなったか? イエス。だが、—夜にして魔法の効果があったわけではない。健康を改善するために、さまざまなことを続けた。以前との違いはたぶん、わたしの反応が違ってきたことだろう。
抜歯前の何週間かは、倦怠感につきまとわれていて元気が出なかったし、抜歯がすんでから何週間かのあいだも、その状態が続いた。今になってわかったことだが、数種の異なるウィルスがわたしの健康を蝕んでいたのだった。ウィルスが抑えこまれたおかげて、本当に久しぶりに健康な日々が送れるようになった。
プライス博士は細菌感染を記録しておられるが、マイニー博士のお話によると、現代の研究者たちは、ウィルスとウィルス感染についてもたぶん同じことが言えると考えているそうだ。わたしの場合もそうだったのかもしれない。ただし、当時は、膿を持った歯にウィルスが関係しているなどとは夢にも思わなかった。
みんなが健康な口腔に関心を持つならば一ー本来そうあるべきだーーわたしたちのようなアレルギー体質の人間はさらに用心する必要がある。残念ながら、一部の人々は古い根管を除去しないかぎり、ぜったいに ”より健康” にはなれないのだ。
山本やよい 訳
Writer profiles
山口 トキ子
恒志会常務理事・医師
鈴木 博信
恒志会副理事長・桃山学院大学名誉教授
1934年神戸市生まれ。東京大学教養学科を経て同大学院国際関係論修士課程終了。
59年NHK報道局記者となり、アフリカ移動特派員、サイゴン特派員。サイゴン滞在中に風土 病にかかり腎・肺を障害して帰国、療養生活に。 13年の療養生活ののち、81年NHK外信部にリハビリ帰任。82年から教職にうつり、桃山学 院大学を中心にして、関西学院大学法学部非常勤講師や京大大学院非常勤講師(「20世紀学・ 現代ロシア」)もうけもつ。この間、92年サンクトペテルブルク大学歴史学部、2000年ハー ヴァード大学ロシア・ユーラシア研究センターで客員研究員。06年、桃山学院大学名誉教授。
著書
「アフリカ」「超大国の不思議な関係―日本の条件5」(ともに日本放送出版協会)など。
訳書
「対話の価値」「報道・権力・金」「膨脹と共存―ソヴエト外交史1,2,3」(ともにサイマル出版会) 「強奪されたロシア経済」(日本放送出版協会)「石油国家ロシア」(日本経済新聞出版社)など。
山本 やよい
翻訳者
同志社人学卒。
サラ・パレッキーのヴィク・シリーズの他、『漂う殺人鬼』『殺人作家同盟』ラヴゼイ、『書斎の死体』
クリスティー(以上早川書房)、『ただ忘れられなくて』バログ(ヴィレッジフックス)、『ノー・セカンドチャンス』『イノセント』コーベン、『死者の季節』ヒューソン(以上ランダムハウス講談社)など訳書多数。最近では『生け賢たちの任官』デヴィッド・ヒューソン(ランダムハウス講談社)2007年4月1日発行。ジャンルごとに分類してあります
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